町田で育ち、町田に戻る。
キンモクセイ 佐々木 良さんが語る
「まほろ座 MACHIDA」という場所
更新日:2026.04.09
キンモクセイ ギタリスト
まほろ座 MACHIDA 店長佐々木 良さん
小田急町田駅、JR町田駅のどちらからも近く、高度成長期の町田とともに歩み、長くまちの文化を見守ってきた老舗ビル「パリオ」。その地下1階にある「まほろ座 MACHIDA」(以下、まほろ座)は、食事とともに音楽を楽しめるライブレストランです。ステージと客席の距離が近く、演奏する側の息遣いまで感じられる空間には、全国各地で活動する、世代やジャンルを越えたアーティストたちが集っています。
その「まほろ座」に、立ち上げ当初から関わり、現在は店長として現場に立っているのが、ロックバンド・キンモクセイのギタリスト、佐々木良さんです。1990年代後半から2000年代にかけて、キンモクセイは数々のヒット曲を生み出し、紅白歌合戦にも出場。メジャーシーンの第一線を経験してきたミュージシャンが、なぜ町田で、音楽を「支える側」として立ち続けているのか。そこには、音楽とまち、そして人との関係を見つめてきた佐々木さんならではの視点があります。
まほろ座での時間が
キンモクセイ再結成のきっかけに
「活動休止を決めたあとも、キンモクセイのメンバーとは、ビジネスだけでつながっている関係ではなかったので、そのうちまたやるだろう、という思いはどこかにありました。活動休止を決めた瞬間に、活動再開の準備を始めていた、というか」
ボーカルの伊藤俊吾さんと二人でユニットとしてツアーに出たり、自身のバンドにほかのメンバーをサポートとして迎えたり。大きな看板としてのキンモクセイはいったん下ろしながらも、個人同士の関係は、自然な形で続いていきました。
「僕の中には、メンバーとの関係を保ちながら、うまくつなぎとめておこうみたいな気持ちがあったのかな。正直、キンモクセイに一番執着していたのが、僕だったのかもしれない(笑)。それが、結果的にまほろ座につながったような気がします。他のメンバーに『出てくれない?』と声をかけるようになり、何人かが集まってイベントをしたり、誰かが誰かのサポートメンバーで関わったり。今なら再結成があるんじゃないかという空気が生まれたのも、まほろ座を起点に交流が少しずつ活発になっていったことが大きかったですね」
町田に貢献したいという思いが重なり、
つくる側から支える側へ
佐々木さんと「まほろ座」との縁が生まれたのは、2015年のことでした。
「ライブ業界でお世話になった方から、『町田で新しくライブハウスを立ち上げることになり、自分も関わっている』という連絡をもらったんです。『良くん、町田出身だよね。もし、興味のありそうな人がいたら、紹介してくれない?』って。それに対し、『僕、興味あります』と即答しました(笑)」
当時は30代後半。楽曲制作の仕事をしながら、法人化したばかりのタイミングでもありました。
「この年齢で、何か新しいことを始めるのは、正直ハードルも高い。でも、音楽の現場にいられて、オープニングスタッフとして関われるなら、やってみたいと思いました」
そこには、地元・町田への思いも重なっていました。若い頃は外へ向いていた意識が、一巡して、地元に目が向くようになる年代。
「やっぱり地元に帰ってくると安心するな、という感覚はありました。何か貢献したい、というとちょっとおこがましいですけど、将来的に町田で何かできたらいいな、みたいなことは、ぼんやり考えていたんです。そんなことが、浮かんでは消え、みたいな感じで思っていたところに、町田でライブハウスを立ち上げるという話があって。いろいろなタイミングが重なって、ぜひやりたい!と」
これまで、音楽を「つくる側」としてライブハウスに立ってきた佐々木さんが、今度は「支える側」に回ることで、見えてきたものがあります。
「誰に向けて音楽をやっているのか、誰に届くかみたいなところの考え方が変わってきたというか。かつては、漠然としたリスナーを想定していた部分が、いまは目の前のお客さんや、アーティストを支えているスタッフなど、より身近なところに向いている。そこから伝播していくものを、より意識するようになった感じですかね」
現場に立つことで、運営のリアルも知りました。アーティストとしては「早めに入るのが礼儀」だと思っていたことが、会場側からすると準備の妨げになることもある。ライブ後、楽屋でくつろぎたい気持ちと、次の準備とのバランス。
「経験豊富なアーティストほど、周りをよく見ています。帰りも早いんですよ」
まほろ座を
相談できる場所にしたい
まほろ座は、若手の登竜門というより、どちらかというと、キャリアを重ねてきたアーティストが、今の自分をそのまま表現できる場所として機能しているといいます。「一世を風靡してきた人もいますしね」と佐々木さん。
一方で、「まほろ座」をきっかけに活動を始め、ここで経験を重ねてきたアーティストもいます。その代表的な存在が、まちだガールズ・クワイアです。
「彼女たちは、ちょうどまほろ座の立ち上げと同じタイミングで活動を始めました。最初はお客さんもほとんどいない状態で、それでも毎月ライブを続けてきて。最終的には、町田でいちばん大きなキャパシティの町田市民ホールが満席になるところまでいきました。彼女たちもちょうど10年が経って、この間、10周年でまた市民ホールのステージに立ったんです。それを見たときは、正直、ちょっと感慨深いものがありました」
「まほろ座」が立ち上がった当初を振り返ると、声をかけるアーティストも、自然と佐々木さんと同世代が中心でした。
「10年前だと、30代後半くらいの人たちが多かったんですけど、その頃はまだ、着席で落ち着いてご飯を食べながら、というスタイルが、ちょっとしっくりこない人も多くて。でも、そこから10年経って、40代後半とか50代に差しかかってくると、「まほろ座」が自然にマッチするようになってきたんですよね」
同じ人たち、同じ関係でも、時間が経つことで、場との距離感は変わっていく。佐々木さんは、その変化を現場で実感してきました。そうした時間の積み重ねのなかで、佐々木さんが、町田の文化や表現の場として思い描いているのが、アーティストにとって「まほろ座」が相談できる場所であることです。
「ちょっと凝った企画を思いついたり、他では頼みにくいアイデアが浮かんだりしたときに、「まほろ座」を思い出してもらえたらうれしいなと思っています。「まほろ座」で定期的にライブを開催している磯貝サイモンくんから、デビュー7周年にあたり『7時間耐久ライブをやりたい』と相談されたときにも、『やりましょう』と(笑)。途中で休憩を挟みながら、ここで3食食べるような形で、実際に7時間ライブをやりました」
「そもそもこのまほろ座が入っている「パリオ」のオーナー、中村惠は、人がつながれる場所を作りたいという思いで、このビルにまほろ座を作っています」と佐々木さん。
「そうした場所であるためには、まずは長く続けることが大事。そして、まほろ座として何か大きなことをやるというより、この場所を残していくことが一番大切だと思っています」
町田で育ち、町田に戻るということ
佐々木さんは、生まれも育ちも町田。忠生第三小学校、町田第三中学校を経て、山崎高校を卒業した、生粋の町田っ子です。
「芹ヶ谷公園で家族と過ごし、親の買い物につきあったあとは、デパートの屋上で遊ばせてもらう。駅近にあった映画館で初めて映画を観た記憶が、今も鮮明に残っています。町田って、あまり遠くに行かなくても、この辺で完結するまちですよね」
町田は東京なのか、神奈川なのか、といったおなじみの議論も、「目くじらを立てて、いや、東京だ!と主張している人は、僕のまわりでは聞いたことがない。みんなどこかおおらかに受け止めています」と笑います。佐々木さんは、そんな町田の立ち位置を「血液型でいうとB型的」と表現します。
「めちゃくちゃ個人的で勝手な印象ですけど、自由で、こだわるところと、こだわらないところが、はっきりしている感じというか。全部に主張が強いわけじゃないけど、おもしろいことには、わりと寛容なまちだなと思うんです。僕自身がB型なので、そういうところが肌に合うのでしょうね(笑)」
おもしろいことや好きなことには、いつの間にか人が集まり、王道もサブカルチャーも、無理なく共存している。佐々木さんが語るB型的な感覚にも通じる、そんな町田の懐の深さは、さまざまな表現者が行き交い、それぞれのペースで音楽と向き合える、まほろ座のあり方にも重なります。
今後について話を向けると、佐々木さんは、「キンモクセイとしての音楽活動も続けながら、新しいことにも挑戦していきたい」と話します。
「新しい楽器を始めてみたいなと思っていて。一度もやったことがない楽器を、また一からやってみたい。例えば、管楽器。サックスとかをやってみたいですね。ドラムをちゃんと先生に習いに行くのもいいし、それこそピアノを習うのもいい。タップダンスもいいかもしれない(笑)」
そして、町田市のキャッチフレーズ「いいことふくらむ まちだ」に添える言葉を尋ねると、こう答えてくれました。
「『つづけること』ですかね。『つづけることで、いいことふくらむまちだ』、だと思います」
町田の移り変わりを長く見守ってきたパリオというビルの中で、「まほろ座」はこの10年、人が集い、表現が生まれる場所として時間を重ねてきました。「まほろ座」は今日も、音楽を通して人と人が行き交う場であり続けています。
まほろ座 MACHIDA
TEL 042-732-3021住所 町田市森野1-15-13 パリオビルB1F
HP https://www.mahoroza.jp/
@mahoroza
@mahoroza2015
@mahorozamachida
節目を目前にして、これからの活動を考えたときに生まれたひとつの答え。
この年4回のライブを”基本のライフワーク”としながら、それ以外の挑戦や企画を広げていく。
そんな、ちょっと新しい、ちょっと横着なキンモクセイらしい試みを勝手知ったる まほろ座で、各季節ごとに皆さまをお迎えします。
それでは、劇場でお会いしましょう。
キンモクセイ劇場 2026春
2026年04月20日(月)
【昼】14:00 / 14:30
【夜】18:00 / 18:30
前売 ¥6,500 / 当日 ¥7,000
+1ドリンク600円
※整理番号順入場・自由席
出演 キンモクセイ
・伊藤俊吾(Vo)
・佐々木良(Gt)
・後藤秀人(Gt)
・張替智広(Dr)
サポート
・伊藤健太(Ba)
・Sugarbeans(Key)
