今年、来年、その先へ――
町田でサッカーが盛り上がるためには、
僕らの活躍が絶対条件
更新日:2024.06.14
昌子源選手
FC町田ゼルビアのJ1初挑戦となる今シーズンのキャプテン、昌子源選手が登場。試合が次々に行われる過密スケジュールの中、インタビューに応じてくれました。試合の裏側、今後の町田とサッカーのことなど、たっぷりお届けします。
――F C町田ゼルビアに移籍する前は、“町田”はご存知でしたか? 何か印象はありましたか?
僕、移籍の話があった時に、こうちゃん(太田宏介さん 前F C町田ゼルビア選手・現クラブアンバサダー)に連絡入れたんですけど、まずはどんなチームかを聞きましたね。移籍の決断をするって、チームのことがもちろん大事ですから。町田市については、ゼルビアっていうチームがあるから知っていたって感じでした。僕も…皆さんいる前であれですけど、東京なんや! っていうイメージで(笑)。関西出身ですし、鹿島アントラーズにいた時も、東名高速でも通り過ぎるだけで、意識したことがなく(笑)。ずっとJ1にいたので、交わることがないチームでしたし、町田市のイメージはそういう感じでした。
――こちらに移籍して、実際生活する中で、町田市で訪れたお店などありますか?
市内だったら、町田G I O Nスタジアム近くの、“シャーロック・ホームズ”っていうお店が美味しいって、若い選手たちに教えてもらって、めちゃくちゃおいしかったな。直近だとそこが一番印象的でしたね。がっつり食べたい時は、若い選手たちは肉が多いですね。
――リーグ戦での対浦和レッズ戦(5月26日)では、勝利しましたが、選手だけでなく、サポーターたちも初めてJ1のアウェイの雰囲気を味わった人も多かったと思いますが、その時のエピソードなど聞かせてください。
浦和レッズは、サポーターの皆さん含めて、ものすごい応援です。俺も浦和でのアウェイのピッチに立ってみようって、絶対思わせる何かがあるんですよね、こっちも燃えてしまうような。レッズはそういうところで、僕はリスペクトがあります。レッズは唯一無二。オリジナル10と言われる鹿島もガンバも素晴らしいクラブで、根強いファンがいるところなどは似ているんですが、レッズの埼スタは何かが違う。僕自身は、埼玉スタジアム(**)では、何回も試合していますし、そこで優勝したこともあるから、その瞬間のすごいブーイングも経験がある。だけど、僕らが勝つと、あの浦和レッズサポーターが本当に一瞬シーンと静かになる瞬間があるんですよ。その後、我に返ったように“We Are REDS”(***)のコールをされるんですが、あの瞬間がやっぱりたまらないですよね。
先日の試合では、浦和サポーターが約4万人、町田サポーターが約2000人と聞いていたので、試合前に、選手で円陣組んだときに“4万人を黙らせにいくぞ”って、言わせてもらいました。浦和戦が初めての選手たちも多く、 “勝つとシーンってなる”って話しをしていたので、勝った瞬間、若い選手に“ほら、シーンってなったぞ”って言ったら、“ホントだー”って(笑)。
試合で勝ったあと、ゼルビアサポーターの前で肩を組んでラインダンス、というのをするんですが、その時もブーイングでかき消されるかなって思っていたら、町田の声だけが聞こえるっていう、僕らにとって特別な空間になりましたね。最後までこっちが楽しくやらせてくれたなって思いました。
――浦和レッズのようなサポーターの量、文化を生み出すのは、何年もかかる難しいことですよね。F C町田ゼルビアの今シーズンの快進撃で、クラブも、市も知名度が上がってきたと思うのですが、もっと応援にきてもらい、町田でサッカーを盛り上げるためには、何が必要だと思いますか?
これは結構難しいし、シビアな問題ですよね。まず僕らが今年だけじゃなくて、毎年J1にいるのがマストで、毎年優勝争いして…というのが、正直絶対条件みたいなところがあると思うんですよ。応援するチームが強くあって欲しい、っていうのは当たり前だと思うんです。
ただ、J1になると、対戦相手に有名な選手が多いから、それを目当てに来てくれるっていうのも、正直あると思います。代表になった選手を見たいとか、でいいんですよね。特に日本代表はわかりやすい。あの人を見に行こうが多いんですよ。海外組が多いですし、それこそ建英(久保選手)見に行こうとか、冨安を見に行こうとか、“人”で呼べる。町田の選手も、若くていい選手がいっぱいいますから、平河悠とか藤尾翔太、彼らを見に行こうっていう入り口でもいいんですよ。そういう理由で見にきても、町田強いね!面白いじゃん!て思ってくれたらいい。ゼルビアを見に行こう、から、応援しよう!のマインドに変われば1回の観戦では終わらず、自然と観戦人数って、増えていくと思うんですよね。あとは、代表入りする選手が増えること。晃生(谷選手)が今回選ばれましたけど、日本中、世界中から注目してもらえますから。
僕が所属していたガンバと鹿島は、両方ともサッカー専用スタジアムだったんです。そうすると、個人向けの厳しい声も全部聞こえる。レッズとか鹿島とかガンバって、5連勝していても、6連勝目で負けたらブーイングがくるような、そういうチーム。ゼルビアもそういうところにしていきたいと思います。勝って当たり前のチームにならないといけないですよね。そうなると、選手の質、スタジアムの規模、サポーター、何もかものサッカー水準を上げないといけないと思うと、今の方が難しさは全然多いんじゃないですかね。
本当の勝負は、来年からだと僕は思ってるんです。いろんなことを考えると、やっぱり絶対条件は僕らの活躍、そこから町田のサッカーの盛り上がりに繋がると思います。
――サポーター含めて、まだまだJ1新入生のF C町田ゼルビアですね。
全部含めて、これからですよね。
息子がゼルビアのサッカースクールに入ったときに、今年会員数がすごい伸びてるって聞きました。“源くんたち、トップが頑張ってくれているからです”って言われたんですよ。そういうところにも反映するって考えたら、今年だけ優勝争いしてて、来年は残留争いしているようだったら、スクール生たちも、他のチームのスクールに行っちゃうかもしれない。やはり、J1にいるのが当たり前、一桁順位、5位以内そういうクラブになれば、子どもたちはゼルビアに入りたいって言ってくれると思う。もう、ほんとうに、僕たちの活躍に8割くらいかかってるんじゃないですか(笑)。でも、批判も含め、全部受け止めるのが僕ら選手なんで。
――今は、チームでキャプテンという立場、年齢もあって、指導する機会も多いのではと思いますが、何か伝えるときに、気をつけていることはありますか?
試合中とか、練習中に、若い選手たちには割と言う方だと思いますね。僕は言ったこと、求めたことによって、責任が生まれると思っています。他の人にやれよって言っても“源くんやってないやん”って言われるのは、一番ダサいと思っているので。言ったことによって僕がそれ以上にやらないと、説得力がない。自分で言うのも照れがありますが、キャリアもあって、かつキャプテンという役職を任せてもらってる、でもその源くんが一番やってるよね、だから俺たちもやらないといけない、って思わせるのが一番手っ取り早い。そこはすごく意識しますね。ちゃんと、言葉にして伝えた方が一番伝わるじゃないですか。コミュニケーションって結局口から生まれると思うので。
――最後に、町田でサッカーをプレーしている子どもたちに、一言メッセージをお願いします。
まずは僕らを見に来てほしいです。僕もあそこに立ちたい!と思わせられるかは、僕ら次第ではあるので。初めて見に来た試合で負けてる可能性もありますが、勝ち負けがある世界だっていうことをわかってもらうことも大事ですし。あとは好きな選手を見る、自分のやってるポジションの選手が、いかに頑張っているかっていうのを直接見るとか、点を取って一緒に喜ぶ!とか、とにかく、スタジアムで直接見に来てくれるのが一番いいんじゃないかなと思います。
PROFILE
しょうじげん・1992年生まれ 兵庫県出身。米子北高校を経て2011年鹿島アントラーズに入団。J1リーグ、ヤマザキナビスコカップ(現Y B Cルヴァンカップ)、天皇杯、A C Lなど数々のタイトル獲得に貢献。2018年ロシアW杯日本代表として活躍。翌年、トゥールーズFC(フランス)へ移籍。帰国後はガンバ大阪、鹿島アントラーズを経て、2023年F C町田ゼルビアに移籍。選手、スタッフの投票によってキャプテンに選出。サッカーメディアREIBOLA には連載コラム「発源力」https://reibola.com/column/を掲載している。
*Jリーグに加盟するクラブが参加するカップ戦。ヤマザキビスケット(略称・YBC)が冠スポンサーとなっており、JリーグYBCルヴァンカップ(略称はルヴァンカップ)の大会名称を用いる。
**埼玉スタジアム2002 約6万人収容のアジア最大級のサッカー専用スタジアム。2002年の日韓ワールドカップ開催のため建設された。通称“埼スタ”。浦和レッズのホームグラウンド。
***浦和レッドダイアモンズ(レッズ)の応援歌(=チャント)の代表的な存在。