22歳でオーナーに!若きパティシエ、
不二家町田木曽店・田村さんの
歩みと挑戦
更新日:2024.11.7
田村菫さん
幼少期からのお菓子作りへの情熱を胸に、町田市で不二家の店舗を引き継いだ田村菫(すみれ)さん(24)。家族の支えと地域の人々とのつながりを大切にし、福祉活動や独自ブランド「スミレベイク」の展開にも挑戦しています。町田の発展と共に歩む未来を見据えた経営が注目されています。
田村さんはまだ大学生だった22歳のとき、バイト先の不二家町田木曽店のオーナーとなりました。若き経営者であり、パティシエであり、福祉への貢献者でもあり、地域で大変な活躍を見せています。そんなパティシエの物語をたどっていくと、始まりはアニメの世界でした。
「母に聞いたら、保育園の頃に姉が好きだった『おジャ魔女どれみ』をたまたま一緒に見て、そのなかで主人公がパティシエをやっていたことが興味を持つきっかけだったみたいです。初めは、母と一緒に真似して作っていて、キットを使っていたんですけど、ミックス粉とかを混ぜるだけじゃないですか。その工程に物足りなさを感じて、ネットで調べて一から作ってみたりしました」
小学5年生になると、バレンタインのチョコレートを本格的に作るようになり、マカロンなど、難しいスイーツに挑戦しました。周りには、そこまでやる子はいなかったようで「自分でもレベルが違うなって」思っていました(笑)。ちなみに中学は吹奏楽部、高校は新体操部に所属。不二家との出会いはその高校時代だそうです。
「高校2年生から不二家のアルバイトを始めました。部活よりも勉強よりも、何よりもバイトが好きになりました。いろいろ任されるようになって、週4日か5日くらい働いて、とにかくバイト優先の生活で、学生時代の思い出はほとんどバイトです。販売も、製造もやっていました。任されるのはうれしかったです。調理科で学んでいたこともあってスキルはどんどんあがっていきました。高校の時からいつも家族の誕生日ケーキを作っていて、今見てもいい感じになっているなと思ったりします。年々気合が入っていきましたね」
そんな田村さんが店舗運営で大切にしているのは「アットホームな感じ」で、お客さんにとってもスタッフにとっても居心地の良い場所を目指しているそうです。ただ、そもそもオーナーを引き継ぐとは大変大きな決断だったと思います。後押しするものはあったのでしょうか。
「最初、『つぶれたら借金まみれになる』『初めの投資が大きいんじゃないか』『ずっとやっていかなきゃいけないことを今決めるのはどうなの』『まだバイトしかしたこともないのに』など反対の声が多かったです。それでも私には『今しかない』という気持ちが一番でした。自分がもしどこかで就職して後で『やりたい』って思ってもなかなかできないかもしれない。だから、すごいチャンスが来たと思いました」
そのような中、理解を示してくれたのが田村さんのお母さまでした。「一緒にやろう」と温かく背中を押してくれたそうです。実は今はそのお母さまも一緒にお店で働いており、悩んだときに相談相手になってくれていると言います。一方、不二家といえば、多くの人にとって馴染みのある存在です。そのイメージを「壊しちゃいけない」と思いつつ、色々挑戦したいという願望もあるそうです。
「売り場の改装をして、がらっと雰囲気を変えました。水色の壁だったり、白い棚も注文して作ってもらったり。個人で持っているもので揃えたりもしました。特にフレッシュさを意識しました。他の店舗だと売り場は白を基調としているので、その点では差別化にもなっていると思います」
また、店舗の特徴的な取り組みとして「ペコちゃんチャレンジ!」という体験企画があります。小学生までの子どもが対象で、私と一緒にケーキを作ってそれをショーケースに並べて、その子の保護者の方に(おもちゃのお金で)買ってもらうというものだそうで、とても人気を博しているようです。
「お仕事体験ですね。元々本社の企画で『 ぜひやらせて欲しい』ってお願いをしました。ペコちゃんチャレンジでは商品名や値段も子どもが決めます。なかなか他店ではやっていません。先月もうちともう一店舗くらいで。ただ、それだけに実施をすると遠方から参加していただける方もいらっしゃいます。こういう体験をきっかけにケーキ屋さんになりたい人が増えたらいいなって思っています。大きくなったら『アルバイトに来てくれるのを待っているよ』っていう気持ちで(笑)」
【ペコちゃんチャレンジ!公式HP】
https://www.fujiya-peko.co.jp/cake/pekochalle/
店舗運営や子どもとの楽しい時間の共有で、充実した毎日を送っている田村さんですが、オーナーとして悩みや苦労もあるようです。
「私がオーナーになって、前から残ってくれているアルバイトは1人だけ。その人以外は全員新しい人だったので、 最初のうちはすごく大変でした。 みんなを一気に成長させないといけなかったので。年齢的にも自分の少し年下くらいだったので、友達感覚みたいになってしまう場面もあり、伝えにくかったり。結局全部自分でやってしまって体力的に大変でした。何とか改善をしていかなければいけないなと思って、色々調べる中で『みんなに言いたいことは言って、あとは信頼していこう』と思うようになりました。そしたら段々と良くなっていきましたね」
町田生まれで町田育ちの田村さん。「不二家をやる」と個人のSNSで投稿したところ、お祝いみたいに盛り上がり、喜んで来店してくれた人もいたそうです。逆に何も知らずに来て「働いているの?」と驚かれることもしばしば。お母さまの知り合いや姉、妹の友人たちの来店も多く「人に恵まれているなって思います」と話します。 このような地元ならではの展開は、とてもやりやすいと感じているようです。そのような中、この春、横浜に新店を出したそうです。
「今年5月に新店舗をオープンしました。ここも町田と同じくオーナーが高齢となり、引き継ぎ先を探しているという話が来て、引き受けました。やはり『不二家を守りたい』っていう気持ちが強かったです。もちろん負担は増えました。全然知らない場所でどこに何があるのかもわかりません。ただ、やはり小さい頃からケーキ屋さんに憧れ、ずっと不二家が好きなので。私ができることがあれば力になっていきたいです」
2店舗を経営しつつ、さらに個人として洋菓子のネット通販などを展開する「スミレベイク」の運営もしています。2023年の夏には、町田ダリア園の開園時期に合わせて「ダリアクッキー」を作りました。秋に大きな花を咲かせるダリアの花をかたどったアイシングクッキーで、マメ科の植物バタフライピー(青)・クランベリー(ピンク)で色づけたクリームをもって、花びら1枚1枚を表現しています。
「まだ趣味の延長くらいなんですけど…。ダリアクッキーはダリア園に就労している姉がきっかけでした。園のパンフレットを持ってきて、『これでクッキーを作ってよ』と言われて(笑)」
田村さんは「姉のおかげで福祉に興味を持つことができた」と言います。ダリアクッキーを通じて売上が福祉の部分に行き届いたり、地域社会への貢献につながればとも考えています。ちなみにそんな姉について「うるさくて、面白くて、見ていて飽きない人」と言います。将来、姉と一緒に働くことも夢のひとつです。
「ダリアクッキーだけをみても福祉と繋がりがあるとは思えないとは思うんですけど、 商品を機に広がってほしい。例えばお店のものを買うと、何かの補助金になるみたいな仕組みってあるじゃないですか。そういう感じでも全然いいなって思っていて。自分もクッキーがもしそういう風になっていったら素敵ですね。 福祉に貢献ができて、自分は町田市で売上げを作ることができるという感じです」
町田市では、まちだの「ひと×まち」のエネルギーが成長し、未来への可能性や期待感がどんどん膨らんでいく様子を、ロゴマーク「いいことふくらむまちだ」で表現しています。田村さんは実は小学生の頃、このロゴマークを決める際の投票に参加したそうです。そんな田村さんは今、何を通して「いいことふくらむまちだ」を感じていますか?
「『人とのつながりでいいことふくらむまちだ』ですね。結構私は人に恵まれているし、みんなが一緒にやってくれて成り立っているのでその点を伝えたいです。いいつながりが町田にいっぱい生まれていくといいですよね」