「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

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まちだではたらく

牧場直送の牛乳で作るジェラートは
「さっぱり」で美味しい!
作るのは「200年ぶりの長女」、
北島瑛梨奈さん。
代々受け継いできたこの場所を
守り続ける決意です。

更新日:2024.06.13

icecream factory PiPi

訪れる人を「可愛い牛」が出迎えるicecreamfactoryPiPi(アイスクリームファクトリーピピ)は、近隣では珍しい牧場直営のジェラート店です。牧場は、店主である北島瑛梨奈さんの曾祖父が1941年に町田市相原町で牛2頭からスタートしました。現在牧場は移転し、そこには製造や加工ができる施設と店舗だけが残っています。牧場から「直送」される新鮮な牛乳で作るジェラートは、さっぱりしていて格別です。※ピピはハワイ語で「雌牛」

脱・町田コンプレックス

             
   

ジェラート店はもともと北島さんのお父さんとおじいさんたちが経営していたと聞きました。

「そうですね。ただ、当時はうちの牧場の牛乳だけを使っているわけではなかったのです。私は、自分の祖父らが育てている牧場の牛たちの牛乳のみで『やってみたい』と思いました。そんな中、東京都から『女性対象の補助金』の話があり『これはチャンス』と思い一念発起しました。2019年のことです」

ただ、北島さんがそう思うようになったのは、社会人になってだいぶ経ってからだそうです。北島さんは大学を出て一般企業に就職。中小企業などを対象に広告営業の業務をしていました。その中で中小企業の経営者の方々は経営のことはもちろん、後継者や若手社員について色々な悩みを抱えていることを知りました。

「それで、うちは牧場ですが両親、祖父も同じ中小企業の社長であり『同じ悩みを抱えているのでは』と気がついたのです。そして『他人の悩みを聞いてあげられているのに、身内について聞いたことがあったっけ?』と。それで改めて聞いてみると悩みはやはり後継者のことでした」

北島さんは当時、「継ぐ気はなかった」と言います。それまで「牧場をやってほしい」「継いでほしい」と頼まれたことも1度もなく。あの頃なので「女性だから」という理由もあったかもしれませんが、進路を選択するときにも特に何も言われなかったそうです。

「あと、実は町田がきらいで…(笑)。私は町田生まれ町田育ちで、ずっとこの街で暮らしていたからでしょうか、『もっと都会に行きたい』と思っていました。思春期でしたし(笑)。例えば同じ東京に住んでいながら都心へ出向くとした場合、町田からと下北沢からでは要する時間が違います。特に実家は山の方でもあったので、『同じ東京なのに…』というコンプレックスがありましたね。ところが社会人になると価値観がガラッと変わったのです。新卒で入った会社の規模が大きかったので、そこには色々な地域から上京してきた人たちがたくさんいました。そのような人たちからすると、町田に住んでいるってことは、すごいアドバンテージなんですよ。『都心まで通えるじゃん』『1人暮らししなくていいじゃん』って。それを言われた時、結構ハッとしちゃいました。その感覚がなかったんです。それで町田を見直しました(笑)」

町田コンプレックスから脱したことで、北島さんの目に映る景色が変わっていきました。牧場の仕事に携わるようになり運転免許証を取得。行動範囲が広がり、これまで行ったことのないエリアに出向くことができるようになり、それで「町田にもお店がたくさんある」ことに気がついていきます。それぞれ1番でないかもしれないが「全然これでもいいんじゃない」「まぁ、ありかな。なしでもない」という合格点のレベルの所がたくさん。北島さんは「そういうものを積み重ねていくっていうのが、町田の勝ち筋だと思っています」と笑顔でこのまちの進む道を示します。

「濃厚」は勘違い?

             

ピピのジェラートは「牧場直営」「牧場直送」が大きな強みです。牛乳が新鮮なので、ジェラートはとてもフレッシュな味になります。牛乳は季節によっても、牛の体調によっても、濃さ、甘さ、脂肪分が変わります。北島さんは酪農家の娘なのでその変化を理解しています。それを踏まえた上で、他の配合を決めて、なるべく牛乳の絞りたての味に近いものを提供するようにしているそうです。

「搾りたての牛乳の味ってさっぱりしているんです。どうしても『牧場直営のジェラート』っていうと『濃厚』なイメージをされると思うんですけど、うちの牛乳はどちらかというと、さっぱりです。そもそも牛乳っていうのは、さっぱりしてるものなんですよ。皆さんが『牛乳の味だな、匂いだな』って思っているのは実は牛乳を殺菌する際に生じている焦げなんです。『牛乳臭い』ってあるじゃないですか。あれは焦げです。だから牛乳の味、匂いで『濃い』って思っているものは全部、その殺菌をしていく過程での味、風味です。うちはできるだけ低温で殺菌しているので、その風味が損なわれず、本当に搾った『そのまま』を味わえます」

一口食べてみるとさらっと溶け、匂いの少ないことに驚きます。これが本当の牛乳の味なのでしょう。また、ピピはジェラートの種類も豊富で東京の特産物を使ったフレーバーが話題になったこともあります。町田の焼き芋屋さんのお芋、ゆず、八王子のパッションフルーツ、ブルーベリー、山葡萄、東大和市のお茶屋さんの紅茶、三宅島の塩、アシタバ、レモン…ととにかく色々な味を楽しめます(現在提供していないものもございます。フレーバーは季節により異なります)。

「東京にはいろいろな特産物があるけれど、東京に東京のアンテナショップはないと思うんです。特産物は町田を含めた多摩地域もそうですし、三宅島だったりとか、あとはいろいろな島にもそれぞれあります。それら特産物を1か所で食べることができたら...と考えました。うちのジェラートのショーケースが、東京のアンテナショップみたいにできるんじゃないかなと思ったんです。それから東京や地元の食材を積極的に取り入れています」

楽しいメニュー開発!時には失敗も…

             

北島さんは日々、ジェラートの製造に従事しています。店舗分だけでなく、都内のレストランなど業者さんに卸す分も作ります。ジェラートづくりの中で楽しいのは、新作や自分のアイデアで作ったものが常連のお客様にも「今回のやつ美味しかったよ」などと言ってもらえることだそうです。また、新しいメニューも大きなやりがい。どこかのお店で食べたデザートが美味しかったときに、「この組み合わせでジェラートでもできるかな」とか考えて、やってみるそうです。「実験みたいで面白い」と言います。

「以前、揚げたグラノーラにマスカルポーネのチーズと蜂蜜がかかっているデザートを見つけて、『ジェラートでもできるんじゃないかな』と思ってやってみました。マスカルポーネのジェラートにグラノーラを入れて蜂蜜をかけたんですけど、理論が同じなのですごく美味しくできました。でもそれって仕事の意識がない中で行って食べているからいいんですよね。ジェラート屋さんに行って、同じマスカルポーネグラノーラがあったとしたら、多分やろうとは思わなかったでしょうね。真似はいやですから。あと、失敗してしまったものや、売れ行きが悪かったものももちろんありますよ(笑)」

リニア需要「町田も取り込もう」

             

これからの店づくりについて北島さんはリニア(リニア中央新幹線)に期待を寄せます。町田の隣り、橋本(相模原市緑区)では駅を含めたその周辺の開発が始まっています。「それはやはり町田にとっても大きな機会」。リニアが通ることで東京都心からはもちろん、名古屋、大阪からのアクセスも良くなり加えてインバウンドの需要も期待されています。北島さんは「それらを『町田も取り込もう』」と考えており、「私のここから15年ぐらいの未来予想図なんですよ。だから、それまでに着実に地元で根を張れるようにしたいです」と力を込めます。

この場所を大事にしていきたい

             

「戦後、農地改革があった時、それまで全然自分の土地を持っていなかった曾祖父が、ここの土地を譲ってもらって農業を始めたんです。で、そこから牧場を始めたっていうのが、北島家の酪農家としての原点。この土地は始まりの土地なんですね。それから農業、酪農は曽祖父、祖父、父と続いて、私。私は実は北島家で200年ぶりの長女なんですよ。この店を始めようと決めたとき、祖父も父も喜んでくれました。私自身は今、農業に携わっていませんが、代々やってきた場所をやっぱりどうしても大事にしたい。うちの牧場の牛乳を使って、この場所でずっとジェラートを作り続けていきたいと思っています」

icecream factory PiPi インスタグラムアカウント @milkresort1940
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