舞台は町田!
アニメ『うたごえはミルフィーユ』
原作者が語るアカペラのリアルと
声がつなぐ青春
更新日:2025.07.07

共同原作者/ゲームプロデューサー
・シナリオライター・アニメ脚本家
山中拓也さん
ポニーキャニオン アニメ・映像事業本部プロデューサー
松岡貴徳さん
自らの声を楽器にし、複数人の声だけで音楽を奏でる「アカペラ」をテーマに、6人の女子高生たちの青春と日常を描く音楽プロジェクト『うたごえはミルフィーユ』(以下、『うたミル』)。2022年4月のコンテンツ立ち上げ以降、若手女性声優たちによる本気のアカペラパフォーマンスが話題を呼び、アカペラ未経験だった彼女たちが作品とともに成長していく姿も重なって、多くのファンの心をつかんできました。
そして、2025年7月には待望のTVアニメ化も決定。物語の舞台となるのは町田市をモチーフにした手鞠沢市で、実際の風景も登場するとのことで、女子高生たちの“声の物語”にリアリティと温かさが添えられています。
今回は、共同原作者でアニメ脚本家の山中拓也さんと、ポニーキャニオンのアニメ・映像事業部のプロデューサー、松岡貴徳さんに、作品に込めた思いや、アカペラという表現の魅力についてお話を伺いました。
物語の軸になっているのは
アカペラとコンプレックス
──『うたミル』のプロジェクト立ち上げの経緯を教えてください。
松岡さん(以下、敬称略)山中さんとはもともと別の作品でご一緒していたのですが、あるとき雑談の中で「音楽系のコンテンツをやりたいですね」という話になりました。すると山中さんが「実は昔、アカペラをやっていたんですよ」とおっしゃって、それがきっかけで「じゃあ、一度何か作ってみましょうか」という流れになったんです。その後、山中さんがご用意くださった設定案を見て、すぐにおもしろいと感じ、そこからプロジェクトが動き始めました。
山中さん(以下、敬称略)これまでゲームやアニメにも関わってきましたが、僕自身、大学時代にアカペラサークルに所属していて、自分が専門的に語れるテーマで何か表現したいと、ずっと考えていたんです。アカペラを題材にした企画自体は以前から温めていて、松岡さんとの雑談の中でちょうど互いのタイミングが合った、という感じでしたね。

── 大学のサークルでアカペラを?
山中 はい。『うたミル』は、メンバーは本業が声優、しかも全員アカペラ初心者というグループでしたが、結成2年目で、『全国ハモネプ大リーグ』(フジテレビ系)で全国大会の切符をつかむことができました。
でも、僕が大学時代に所属していたのは、特に強いわけでもなく、3年生くらいの頃には自然と部員が減り、やがて活動も終わってしまったサークルです。短い活動期間ではありましたが、2年足らずの経験や思い出は、自分の人生の中でもすごく重要な時間だったと思っています。アカペラの第一線で活躍していたわけでもない自分なりの目線で、いつかアカペラを語れたら──。そんな思いを、心のどこかで温めていました。
── アカペラやコンプレックスが物語の軸になっているのは、そうした背景からでしょうか。
山中 そうですね。松岡さんとご一緒した別の作品も、コンプレックスや人間の心理に焦点を当てた内容でした。僕自身も大学では臨床心理学を学んでいて、カウンセラーを目指していたので、心の揺れやコンプレックスといったテーマには、ずっと興味があったんです。そこに、自分の経験であるアカペラを掛け合わせたら、自分らしい物語が書けるんじゃないかと思って。そんな思いから、この企画を形にしていきました。
松岡 最初に山中さんから企画の話を聞いたとき「きっとコンプレックスを題材にするんだろうな」と思ってはいたのですが、正直、暗くならないといいなという気持ちもありました(笑)。でも、ふたを開けてみたら、そのバランスがとてもよかったんです。物語に深みがありつつ、女の子たちのやりとりが楽しく描かれていて、本当にいいシナリオだなと感じました。キャラクターも一人ひとり丁寧に掘り下げられていて、それぞれの個性がしっかり伝わってきます。
アカペラって、みんながそれぞれ声を出しているのに、誰か一人が崩れるとうまくいかなくなる。逆に、うまく合わさったときの一体感は格別で、その感覚は、人と人の心が通じ合うこととリンクしているように思えて、おもしろいなと感じました。


大勢の前で声を出すのはちょっと苦手
アカペラはそんな人たちの居場所
── 作品の中核となるのが“声”ですが、声をテーマにした理由はありますか?
山中 声が必要不可欠なのはもちろんですが、そもそもアカペラは、海と川が混じりあった場所のような、独特の空気感を持ったジャンルだと思っています。僕の大学時代の経験でも感じましたが、派手に目立ちたい人や歌でカッコよくなりたい人、俗にいうもっと“イケている”人たちは、軽音に行く。一方で、人前で歌うのが苦手だったり、内向的な人は、そもそも歌のサークルに入らない。その中間に位置するのがアカペラで、人前で歌いたいという欲求はあっても、大人数の前で声を出すのはちょっと抵抗がある、そんな人たちの居場所という一面があるなと感じていました。
アカペラは自分の声と向き合う音楽なので、登場人物の中にも、自分の声にコンプレックスを抱く子や、声を出すこと自体が恥ずかしい子もいます。逆に自分の声に強い自信を持ち、簡単には譲らない子もいる。そんなふうに異なる個性や背景を持つ人たちが集まって、ひとつの音楽を作り上げるのがアカペラのおもしろさだと思っています。だからこそ、声を主軸にした物語が書けると思いました。


声優さんたちの成長が
作品のストーリーと重なって
── 先ほど、『うたミル』が『ハモネプ』に出場されたというお話しがありましたが、それはどういう経緯だったのでしょうか?
松岡 強豪がひしめく大混戦の中、全国大会への切符を手に入れたのは406組中12組でした。その中の1組に入れたのは、素直にうれしかったですね。 もともと、この作品では声優さんたちに“実際にアカペラをやってもらう”ことを前提に企画を進めていて、オーディションの段階からそこを重視していました。歌に関しては、みなさんある程度自信があったと思いますが、ボイスパーカッションやベースは歌とはまったく違う領域なので、そこは苦労されたと思います。
声優さんは本当にお忙しいので、普通なら頻繁にレッスンを入れるのは難しいのですが、毎週スケジュールを調整して時間をつくってもらい、一緒に積み重ねていきました。その過程で声優さんたちのリアルな成長を感じられ、それが作品のストーリーと重なっていくような感覚もあって、すごくよかったですね。
山中 「アカペラの楽曲を出します」となったとき、こだわらなければ、それぞれが別々に録音して、あとから機械で音を合わせることで、“アカペラっぽい”音源を作ることはできます。 でも、僕たちがこの作品を通して伝えたかったのは、「同じ場所で、同じ空気を感じながら、互いに目を合わせて声を合わせること」。だからこそ、全員がそろって一緒に歌うことにこだわりました。
松岡 青春の一時代を描いた物語ですが、YouTubeでも練習風景のドキュメンタリーを配信していて、それを見ていると、確かに青春感があるなと(笑)。
山中 声優さんたち自身も「久しぶりに部活をやってるみたいな感覚があります」と話してくれていて。そんな雰囲気があるかもしれませんね。
「輝かなくても、青春だ」
アカペラに打ち込んだ日々に意味がある
── アカペラを描くうえで、とくに大切にしているのは何ですか。
山中 アカペラをバンドに置き換えても成立するような物語にはしたくない、と思っています。アカペラという表現を内側から知っている人間にしか書けない視点で描く。そこを意識して、物語を組み立てています。
それともうひとつ、「アカペラって最高だよね!」というだけの作品にはしたくないとも思っています。アカペラには、理想だけでは語れない現実的な側面もあります。たとえば、アカペラが国民的なジャンルかというとそうではないし、メジャーなアカペラグループがなかなか生まれないのも事実です。そうした現実を無視せず描くということでリアリティが生まれ、キャラクターたちが実在しているように感じてもらえるのではないかと思います。夢物語にしないように書くことは、特に意識しているところです。
── 「輝かなくても、青春だ」という印象的な言葉がありますが、これに込めた思いとは?
山中 多くのアニメや物語では、大会で優勝したり、大舞台を経験したりと、大きな目標に向かっていく話が多いですよね。でも、『うたミル』では、普通の部活で過ごす、普通の通過点としての青春も、決して意味のないものではないんだ、ということを伝えたかったんです。キラキラしていなくてもいいし、いつも前向きじゃなくてもいい。そんな懐の深い物語にできたらいいな、と思っています。
松岡 こういうコンテンツは、大会を目指して努力して、時には挫折もして、という構成がいちばん作りやすいんですよね。でも、それだとどうしてもありきたりになってしまう。山中さんの大学時代の話を聞いていると、僕とはまったく違う青春なのに、そのリアルさがむしろ新鮮でおもしろい。僕自身はアカペラ未経験で、「歌がうまい人を集めれば、自然といいチームになるんだろうな」と思っていたんですが、そんな単純な話じゃなかった。「えっ、こんなことで衝突したり、挫折したりするの?」と驚くようなこともたくさんあって、本当に興味深かったですね。
山中 実際、『うたミル』の作中でも、いちばん最初に躓くのは、いちばん歌がうまい子なんです。たとえば、これがサッカーを題材にした物語だったら、そんな展開にはなりにくいですよね。賞を取ったり、優勝したりという明確な成果がある活動は、それだけで自然と肯定されやすい。でもアカペラはその逆で、評価の軸がとても曖昧です。順位や勝敗がはっきり決まるジャンルでもありません。そういう肯定されにくい活動だけれども、ただただアカペラに打ち込んだ日々にも、ちゃんと意味がある──。そんなふうに感じてもらえる作品になっていると思います。
松岡 「輝かなくても、青春だ」は、本当にこの作品のテーマにぴったり合った言葉だと思います。


町田は
登場人物たちの心情に重なるまち
── 町田を舞台にした理由をお聞かせください。
松岡 最初は特に場所を決めていなかったのですが、『都会の雰囲気と自然の豊かさが両方ある場所にしたい』と思っていました。大自然の中で展開する作品はよくありますが、リアリティを考えると、大学のアカペラサークルも有名どころは都市部に集まることが多いんです。そうした背景もあり、両方の要素を兼ね備えた町田に着目しました。町田の駅前は賑やかで都会的な一方、少し離れると自然が残っていて、バランスがいいよね、と。
山中 アカペラサークルを「海と川の混じる場所」に例えたように、都会感と田舎感が交じり合う場所がいいというイメージは、事前になんとなくお伝えしていました。実際に町田で取材やロケハンをした際、ビルの屋上から見渡すと、方角によってまったく違う景色が広がっていて、「これは登場人物たちの心情にも重なるな」と感じたのもあって。
これまでの原作は音声だけのオーディオドラマでしたが、アニメになると映像の背景が加わります。その背景は、作品の雰囲気を決定づける大事な要素。町田のように都会的な側面もあり、どこか懐かしさや自然も感じられるバリエーション豊かな場所は、アニメとして描くのにとても適していると感じました。
── これからどんなふうに町田がからんでくるのでしょう? 聖地巡礼におすすめの場所はありますか?
山中 女子高生たちの青春と音楽が交差する場面で、ちょっと遊びに行ったり、重要な相談をするときに、町田のスポットを使わせてもらっています。そうしたリアリティがあることで、町田の高校生たちはこういうところに行くのかな、こんなことをしているのかなという想像がふくらみました。実際にモデルとなる場所が存在するのは、とても素敵なことだなと感じています。
松岡 もっとキャピキャピして、みんなで町田の商店街に遊びに行くような話も考えたんですが、彼女たち、遊びに行かないんですよ(笑)。ただ、今後はそんな展開もあるかもしれません。聖地巡礼におすすめのわかりやすいスポットは、44APARTMENTがある薬師池公園西園です。
山中 薬師池のあたりは作中でも印象深いシーンの場所として登場します。ネタバレになってしまうので、詳しくは言えませんが(笑)。
答えは出なくても
きっと誰かの共感になる
── 作品を通じて、届けたいメッセージをお願いします。
山中 世の中には、すごく明るく前向きな作品や、人生のどん底にいる人を励ますような作品がたくさんあります。この作品は、社会の中でちゃんとやってはいるけれど、「なんとなく居場所がない」と感じている人に届けたいと思っています。作品全体のトーンやテンポも、そうした人にとって癒やしになるのではないかと感じています。
きらびやかな出来事がなくても、普通の人生や心の中のちょっとした揺れ動きも、物語になる。そういう視点を感じ取ってもらえたらうれしいですし、いろいろな方に見てもらいたいですね。
松岡 振り返ってみると、高校時代の悩みって、そんなに深刻なことじゃなかったなと感じる人も多いと思います。でも当時の自分にとっては、それがすごく重大なことだったりする。作中のキャラクターたちの悩みも、大人になれば「そんなことで?」と思えるようなことかもしれません。でも、そうした迷いも、ちゃんと物語になるんです。
この作品では、悩みがすっきり解決するわけではありませんが、アカペラを通して、自分の気持ちと少しずつ向き合っていく過程が丁寧に描かれています。アニメやドラマを見ていて、「こんな展開、現実にはないよ」と感じることもありますが、この作品は、キャラクターの心の動きにちゃんと芯があるので、見てくださる方にも何かしら共感してもらえるのではないかと思っています。

── 声優さんたちからも作品への熱い思いをいただきました。皆さんから届いたコメントをご紹介します。

綾瀬未来さん(ウタ:小牧嬉歌役)「輝かなくても、青春だ。」 うたごえはミルフィーユの世界に生きる彼女たちは、それぞれ人には言いたくないコンプレックスを抱えています。そして、期待していたものとはちょっと違った学生生活や、なかなか上手くいかない人間関係。誰もが少しは共感できる部分、それがこの作品の魅力だと思っています。不器用な彼女たちが、アカペラという音楽を通して繋がり成長していく姿。ぜひ、あたたかい目で見守ってあげてください!

夏吉ゆうこさん(ムスブ:繭森結役) 少女たちそれぞれのコンプレックスへの向き合い方が、アカペラを通して表現されていくのが好きです。 きらきらしていてもそうでなくても、部活っていいなと思える、素敵な作品になっています。

須藤叶希さん(アイリ:古城愛莉役)歌と歌で手を繋ぐって、なんて素敵なんだろう!
『うたごえはミルフィーユ』は、そんな気持ちを私自身も演じながら深く感じさせてくれた、優しさに満ちた作品です。
「コンプレックス」に揺れる彼女たちの姿が丁寧に描かれているからこそ、いろんな優しさの形に触れたとき、きっとそっと心を動かされます。
見終わった後には「アカペラ」を歌いたくなるはず…!ぜひご覧ください!

松岡美里さん(レイレイ:近衛玲音役)さまざまなコンプレックスを持つキャラクターが、アカペラを通して自分や他人と向き合っていく。その中で起こる些細な心の機微を逃さずに描いている作品です。
どこか厄介で愛おしいバラバラな人間たちが、心を一つにしないと出来ないアカペラを本気でしています。その誰かにきっと共感できるはずです。
町田市の風景もたくさん出てきますので、彼女たちはこの景色を見て何を感じたのかなぁ...と想像しながら歩きたいです!

花井美春さん(ウルル:宮崎閏役)この作品は「アカペラ」「女子高生」「コンプレックス」がテーマにあって、キラキラの学園生活とはある意味真逆な、でも小さくても確実に輝いているというのが「うたごえはミルフィーユ」という作品の魅力かなと思います!
個性も性格もバラバラな6人がどのようにして纏まっていくのか、そして、この物語の肝であるコンプレックスがどう展開され、アカペラを通じて何が生まれるのかをテレビの前で見届けいただけると嬉しいです♪

相川遥花さん(クマちゃん:熊井弥子役)この作品はストーリーが繊細で各キャラが持っているコンプレックスに対して、苦しんでいる様子だったり、衝突したりする等身大の姿をありのままに見せています。
そんな中、アカペラという心を通わせる音楽で、お互いの姿が刺激になり、成長していくところが見どころだと思います。
「輝くかなくても青春だ」というキャッチコピーを元に、まだまだ未熟で人間らしいみんなの姿をぜひご覧ください!
年齢も経験も関係なし!
町田でアカペライベントを開催したい
── アカペラの魅力については、どう伝えたいですか。
山中 初めてアカペラを聴いたときの衝撃は、特に生で聴くと本当に強烈です。でも、それ以上に「自分たちでやってみたときの楽しさ」が圧倒的に大きい。自分の声が3重にも4重にも重なってハモる体験を人生の中で味わったことがある人は少ないと思います。それはすごくシンプルなことから始められます。この作品をきっかけに「ちょっとアカペラやってみようかな」と思ってもらえたら、うれしいですね。
「若者の物語」として見るなら、新しい価値観や視点に触れるきっかけになるかもしれませんし、本当に理想を言えば、『うたミル』を見た人が「ちょっとアカペラ体験してみようかな」と思い、地域で行われている体験イベントなどに足を運んでもらえたら、何よりの喜びです。
── アカペラ体験は、世代を問わず楽しめるのでしょうか。
山中 関係ないと思いますね。もっと言うと、歌が上手いか下手かも、実はあまり関係ないんです。もちろん一般的に「歌が上手い人」は、アカペラで言うリードボーカル、つまり真ん中に立って主旋律を歌うパートを担当することが多いですが、リードとしてメロディを響かせる技術と、コーラスとしてハーモニーを支える技術は別物です。だから、歌が苦手だなと思っている人でも、意外とコーラスにハマることがあります。
音域が低くて高い声が出しづらい人でも、ベースパートという役割がありますし、本当にいろんな声の個性を生かせるのがアカペラの魅力だと思います。「自分は歌が苦手」「人前で歌うなんて無理」という人にこそ、一度触れてみてほしい音楽がアカペラです。


── 今後の展開や目標をお聞かせください。
松岡 テレビ越しだと「ボイスパーカッション、すごいな」くらいの印象かもしれないですけど、生で観るともう一段階上の迫力というか。特にボイスパーカッションやベースの音の厚みや凄さは、会場で体感すると圧倒されると思います。
今は『うたミル』のライブ活動も少しずつやっているので、もっと多くの方に生で観てもらえる場を増やしていきたいですね。地域でのアカペライベントや、みんなで参加できるような催しは本当にやりたいなって。
先日、町田薬師池公園 四季彩の杜 西園に行ったときに、44APARTMENTの裏に広い草原のような場所があって、あそこでイベントやったら青春っぽくていいよね、なんて話をしました。実現できたらいいなって思っています。
山中 松岡さんが言ってくれたように、日本でいちばん大きなアカペラフェスも実は野外で開催されています。野外ステージでアカペラをやるのは、とても相性がよく、理想的な形だと思っています。『うたミル』のキャストの子たちがそうした場所でパフォーマンスしている姿をぜひ見てみたいですし、アニメという形でアカペラが注目され、そこから広がっていくことになれば、本当にうれしいですね。
個人的には、アカペラを通じてもっといろんな展開が夢見られるようになればいいなと思っています。町田でアカペライベントを開催したいですし、あとは町田ゼルビアのハーフタイムショーもやりたいですね(笑)。

── 最後に、町田市のロゴマーク「いいことふくらむまちだ」に、お二人らしい言葉を添えていただけますか?
松岡 僕は「ハーモニー」でいきたいですね。「ハーモニーで いいことふくらむ まちだ」。まさにそんなイメージです。
山中 僕は、「重なることで いいことふくらむ まちだ」です。声が重なるアカペラのコーラスと同じように、町田は都会っぽさと田舎っぽさが微妙に重なっている場所。作品の中でも、普通なら出会わなかったような人たちが、たまたま同じ部活にいて、一緒に何かをつくっていく。そういう重なりのハブになっているイメージを町田から感じました。町田は、都会でも田舎でもない曖昧さを受け入れている場所で、そんなまちからいいことがふくらんでいくのは、作品のテーマとも重なるような気がしています。