音なき世界の競技!
デフリンピック代表入りに向け、日々挑戦中
更新日:2024.12.26
デフバレーボール選手 佐藤愛莉さん
町田市在住の佐藤愛莉さんは、聴覚障害者によるバレーボール競技「デフバレーボール」の日本代表候補として活躍しています。普段は会社勤めをしながら、選手として来年日本で開催されるデフリンピック(東京2025デフリンピック/耳が聞こえない・聞こえにくい人のためのオリンピック)に向けて、努力する日々を送っています。これまでの歩み、競技への情熱、そして町田市への思いについてお話を伺いました。
佐藤さんは神奈川県に生まれ、小学校3年生の時に町田市へ転居しました。家族全員がスポーツに親しむ環境で育った経験が、彼女の競技生活の原点となっています。
「父も母も運動をしていて、家族全員がスポーツ好きでした。私も自然と身体を動かすことが好きになり、テニスや水泳、ダンスなどを習っていました」
そんな佐藤さんがバレーボールに出会ったのは小学4年生の時。友達に誘われ地域のクラブで始めてみると、「ボールを打つ際に身体に衝撃が伝わるところ」にひかれ、徐々にのめり込んでいきます。
「中学校での部活が私にとって大きな転機でした。スポーツを通じて、耳が聞こえない仲間たちと初めて関わるようになり、コミュニケーションの大切さや新しい視点を学びました。」
佐藤さんにとってバレーボールの魅力は、「スピード感」と「緊張感」にあるといいます。これらが他のスポーツとは違うバレーボール独自の醍醐味だと感じています。攻守が目まぐるしく切り替わるスピード感と、得点が決まる瞬間の緊張感がバレーボールの魅力です。
「やられたらすぐやり返す(笑)。それが楽しいです」
「デフバレーボールは一般のバレーボールとほぼ同じルールで行われます。私のポジションは守備専門のリベロです。個人的には『ボールを拾えた瞬間』が何よりのモチベーションです。それがチームの得点につながった時の達成感は格別です」
佐藤さんは生まれながらに聴覚障がいがあり、現在は人工内耳を使用しています。しかし、競技中や練習中は人工内耳を外す必要があるため、全く音が聞こえない状態でプレーしています。
「汗で人工内耳が壊れる可能性があるので、試合や練習中は外します。音が全く聞こえない状態でプレーするのは大変ですが、視覚を駆使してカバーしています。目で周囲の動きを追いながら、どこにボールが飛んでくるかを瞬時に判断しています。集中力が大切です」
現在、佐藤さんは来年あるデフリンピックの日本代表を目指しています。日本代表に選ばれるためには、厳しい選考を勝ち抜く必要があります。
「週末には所属チームや関東代表のメンバーと練習を行い、平日も仕事が終わってから自主トレーニングをする日もあります。特に下半身を鍛えないといけない。柔軟性も大切で特に股関節を意識して、調整しています」
佐藤さんは現在、都内の建設会社に勤めています。入社7年目。高校卒業後、専門学校に相当するろう学校の専攻科で2年間学び、企業に就職するための基礎的なスキルを習得しました。
「毎日小田急線を利用して通勤しています。業務内容としては、主にパソコンを使ったデスクワークが中心です。データ入力や資料作成など、日常的に画面に向かう時間が長いため、肩が凝ることも多々あります。ついつい運動したくなってしまいます(笑)」
町田市に住む佐藤さんは、この街の魅力について目を輝かせて語ります。特にショッピングやグルメスポットが充実している点が気に入っているとのこと。
「町田はショッピングもグルメも楽しめる場所が多く、休日はよく駅前を歩き回っています。特にお気に入りなのはカフェ『ラテグラフィック』(原町田)。パンケーキはふわふわで美味しいですし、キノコのピザも絶品なんです。洋服選びでも町田をよく利用します。どんな組み合わせにしようか考えるのが楽しいです。自分が着るだけでなく、友人や他人のスタイリングを考えるのも好きです。プライベートでは派手なスタイルに挑戦したりしています。服はやっぱり着てみないとわからないので、ネットでなくお店に行って買いますね。お店をまわるのはとてもいい気分転換になります」
今後について佐藤さんはまずデフリンピックの代表選手に選ばれることを大きな目標としています。ライバルがおり、試合出場のため筋肉増強やメンタル強化に取り組んでいるといい、「どんどん自分をアピールしていきたい」と力を込めます。
「あと、いずれ家庭を持ちたいです。ずっとバレーボールに関わって、デフバレーボールの認知度向上にも貢献したい。デフバレーボールはまだ知られていない部分が多いですが、一般のバレーボールと変わらない迫力があります。この競技の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいです」
町田市では、まちだの「ひと×まち」のエネルギーが成長し、未来への可能性や期待感がどんどん膨らんでいく様子を、ロゴマーク「いいことふくらむまちだ」で表現しています。佐藤さんは今、何を通して「いいことふくらむまちだ」を感じていますか?
「デフバレーボールでいいことふくらむまちだ。デフバレーボールの選手として地域社会に貢献し、応援の輪を広げることで、それを実現していきたいと考えています」
PROFILE
1997年生まれ、町田市在住。大成建設株式会社・一般社団法人日本デフバレーボール協会所属。