「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

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SPECIAL

エネルギッシュで刺激的
町田の魅力は“多様性”にあり

更新日:2023.08.24

三浦しをんさん 作家

―20代でデビューしてから多くのヒット小説を生み出してきた作家の三浦しをんさん。なかでも2006年に発表した「まほろ駅前多田便利軒」は直木賞を受賞し、のちに映画やテレビドラマ、漫画化もされ大きな話題となりました。この作品の舞台である「まほろ市」という架空のまちは、三浦さんが10歳から30代半ばまで暮らしていたという町田市がモデルです。三浦さんから見た、町田はどんなまちなのでしょう。

「町田の良さって“多様性がある”ところだと思うんです。都会でも田舎でもなく通勤圏内だから都心に働きに通う人もいれば、農業や畜産業をしながらずっと地元で働いている人もいますよね。先祖代々ずっと暮らしている人もいれば、マンションや戸建てを購入して昨日から住み始めたばかりの若い人たちもいて、まちがちゃんと循環している。駅前はいつも活気があってすごい人なんですよ。さっき通ったときも、この暑い中、老若男女で溢れていたでしょう?例えば昼間の丸の内にいるのはオフィスで働く人が大半でしょうし、渋谷は若者が多いとか、そのまちごとの色合いってあると思うんです。その点、町田には本当にいろいろな人が暮らし、行き交っていますよね。年齢、国籍、職種。ちょっと職業の見当がつかないような怪しい雰囲気の人とかもたくさんいますし(笑)」

いろいろな人が交差することで生まれる
混沌としたエネルギーが町田の魅力

―取材がおこなわれたのは8月の猛暑日。35℃を超える暑さの中、たしかに町田駅のまわりはたくさんの人々で賑わっていました。主婦、こども、大学生、サラリーマン、老人、外国人。目的がある人、暇そうな人…。でもどこか、のどかで平和な雰囲気。

「こんなに多様な人々が暮らしているわりには、それなりにみんな仲良くやっているというか、平和なところもいいですよね。たまにびっくりするような事件が起きたりしますけれど、それはどのまちでも起こりうることですから。昔から駅前に行くと怪しい雰囲気の人は結構いて、古くは偽造テレカを売ってる人とかね(笑)。そういう混沌とした雰囲気も大好きなんですよ、私。いろいろな人が暮らしているからこそ、ある種のいかがわしさのようなものも生まれるし、いろいろな文化がここでごちゃ混ぜになるからこそ、わりと早い時期からさらに新しい文化が生まれたりもする。たとえば町田周辺には古着屋さんが多いというのも、多様な人々がいるという背景が密接に関係していると思います。エネルギーと刺激に満ちたまちだと思います」

取材当日は「まほろ」シリーズの映像化の舞台となった原町田周辺を歩きながら、三浦さんも縁の深い、「町田市民文学館ことばらんど」へ移動。町田仲見世商店街の、大判焼きのマルヤ製菓にも立ち寄った

これからの時代、
町田の持つ「多様性」は
まちを生き延びさせ
人々を豊かにしていくカギになる

「町田は平穏な住宅街としての顔も持っているし、少し郊外の方に行けば自然もいっぱいあります。広いまちだからからこそ、エリアごとにいろんな風景やカラーがある。それもまた多様性だと思うんです。そして、多様性というのはこの先、まちが生き残っていくキーワードになるような気がしています。自分と異なる考えの人がたくさんいるからこそ、意見交換しながらより良い方向性を探ることができて、それが変化や改善につながっていく。何かがあったときに“そうじゃないよ!”って意見を言い合いながら、お互いにとっての良いまちのあり方を探っていけるかどうかで、まちの未来は全然違ってくると思うんです。逆にお金持ちだけとか、特定の人だけが住み良い保守的なまちというのは、この先どんどん過疎化していくんじゃないかな」

―大ヒット小説の舞台になっている架空のまち「まほろ市」も、作中で描かれるさまざまな人間模様にまさに「多様性」を感じます。

「町田のような郊外のベッドタウンって、一種のステレオタイプなイメージがありませんか?国道沿いにチェーン店がいくつもあって、同じような家族構成の一家が住んでいてっていう均質なイメージ。でも町田を見ていて、全然そうじゃないよなってずっと思っていたんです。均質なイメージがあるかもしれないけど内実は全然違うんだよ、っていうことを伝えたくて「まほろシリーズ」を書きました。でもそれはどこの郊外でもきっと同じで、どんなまちにもさまざまな人が住んでいるはずなんです。だけど建設中のタワマンとか○×ニュータウンとか、そういうところってやっぱり住む人の世代やカラーが何となく均質になってしまいがちじゃないですか。すると、子育てが終わると建物は残っても人はみんないなくなっちゃう。つまり過疎化してしまう。そこからまたリノベして若い人を呼び戻して…となると非常に大変だと思うんです。それだったら最初から、いろいろな人が住めるまち、マンション、コミュニティを目指した方が、絶対に手っ取り早い。この方向で行くのが時代に合っているんじゃないかって、町田を見ていてそう思います。これからの時代は多様性がまちを生き延びさせ、人々の暮らしをより豊かにしていく。物質的なことに限らず、文化的にも精神的にも豊かに暮らせるカギは、町田が誇る多様性にあると思うんです」

インタビュー場所として訪れた「町田市民文学館ことばらんど」では、自由に読書ができる。町田市にゆかりのある作家さんのコーナーもあり、もちろん三浦さんの著作も揃っている
三浦しをん
PROFILE
1976 年東京生まれ。2000 年『格闘する者に○』でデビュー。2006 年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、2012年『舟を編む』で本屋大賞受賞。そのほかの小説に『風が強く吹いている』『きみはポラリス』など。エッセイ集も人気で多数の著書がある。最新作は『墨のゆらめき』
●訪れたのは・・・
町田市民文学館ことばらんど
https://www.city.machida.tokyo.jp/bunka/bunka_geijutsu/cul/cul08Literature/
() @machida_kotoba
@machida_kotoba

撮影/松村隆史 文/大﨑仁美 構成/田中 希
撮影協力/仲見世商店街、マルヤ製菓  @maruya_08
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