「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

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まちだでくらす

「テント」が仕掛ける
地域アップデート
人が集まる場所がまちを変える

更新日:2025.02.27

JR横浜線成瀬駅南口にある
「TENT」の前に立つ、
松村直輔代表

2021年春、ある団地の一角に、新たな交流の場が誕生しました。コワーキングスペース「TENT成瀬(以下、テント)」です。ここは単なるワークスペースではなく、地域住民が集まり、つながりを生むことを目的に設計された空間。UR都市機構が進める団地活性化事業の一環としてスタートしたもので、ワークスペースの枠を超え、街の関係性を変えていくテントの取り組みは、これからの地域の可能性を広げるヒントになるかもしれません。運営するステップチェンジ株式会社の松村直輔代表とテントを利用するタルト販売enn.の土井綾人さんに話を聞きました。

キャンプのように、
みんなで生み出す

テントの
コワーキングスペース

キャンプでは、寒さや暑さ、風や雨を遮るテントを張り、その中で仲間とともに活動し、食事を楽しむことができます。「キャンプのように人々が集まり、分業しながらコラボレーションを生み出す場を作る」。そのイメージを重ね合わせ、「テント」という名がつけられました。

「キャンプって、テントを張ると、自然と人が集まってくるじゃないですか。そのイメージがまさにこのプロジェクトの原点なんです。それに、ちょっとした言葉遊びもあって。もともと幕張でスタートしたので(2019年)、『幕を張る』と『テントを張る』を掛け合わせたんです。キャンプみたいに、みんなで持ち寄って、協力しながら新しいことを生み出せる、そんな場所になればいいなって思っています」

松村代表がテントを始めた背景には、日本のエネルギー事情への疑問がありました。エネルギープラントの設計や運営を通じ、輸入エネルギーの非効率な利用や、国内の再生可能エネルギーの活用不足に違和感を覚えたのです。そこで、都市部の集合住宅で太陽光発電や蓄電池の導入を進める中、新たな課題にも直面しました。

「きっかけは2011年の東日本大震災でした。普段、マンションの住民同士の交流が少ないことが一因で、助け合いが思うように進まなかったという話を聞きました。そこで、『エネルギーの自立』だけでなく、『コミュニティの再構築』が必要だと強く思いました。そう考えたのが、テントの始まりです。ただのワークスペースではなく、キャンプのように人が集まり、支え合いながら新しい関係が生まれる場所。そんな場があれば、持続可能な地域の形が見えてくるのではないか、と」

ウェルビーイングを育む、
新しい働き方

インタビューに応じる
松村代表

都市部では、昼は住宅地の住民が外出し、夜はオフィス街が静まり返るといった人口の偏りが、地域の活気やつながりの薄れにつながると考えられています。そこで松村代表は、住宅地の近くにコワーキングスペースを設置すれば、自宅近くで働ける環境が整い、通勤の負担が減るだけでなく、地域にいる時間が増えると考えました。

「昼間の住宅地って意外と静かですよね。みんな仕事や学校に行ってしまって、人が少なくなる。でも、近くにコワーキングスペースがあれば、家のそばで働けて、地域にも活気が出ると思うんです。通勤時間が短くなれば、家族と過ごす時間が増えたり、地域のイベントや自治会の活動にも参加しやすくなる。町内会の人手不足も、昼間に地域にいる人が増えれば解決の糸口になるかもしれません」

「また、高齢者の孤立も気になります。一人暮らしの方は地域とのつながりがないと孤独になりがちです。でも、コワーキングスペースが仕事場だけでなく、交流の場にもなれば、気軽に立ち寄れて、人と話す機会も増える。そんな小さなつながりが、安心して暮らせる地域づくりにつながると思うんです」

人とのつながりは自然に続くと思われがちですが、実は時間とともに薄れていくことも多いそうです。子育て期がつながりのピークで、子どもが成長すると関係が減りがち。これが社会全体の幸福度にも影響すると言われています。また、今の高齢世代は仕事中心の生活を送ってきたため、退職後に人とのつながりを失いやすいそうです。60代・70代になって新しい友人を作るのは難しいため、若いうちから趣味や活動を通じて意識的に関係を築き、続けていくことが大切だと考えられています。

「高齢になってから新しい友人を作ろうとしても、なかなか難しい。60代、70代になってから『さあ、友達を作ろう』と思っても、なかなか一歩踏み出せないんですよね。だからこそ、若いうちから意識的に友人を作り、関係を続ける工夫が必要なんです。例えば、共通の趣味や活動を持つことで、子育ての時期が終わっても関係が続くようになる」

「最近よく聞く『ウェルビーイング』も、結局は人との関わりが大きな要素になっています。ただお金があるとか、健康だとかだけじゃなくて、『誰かとつながっている』ことが、自分の存在意義を感じることにつながって、それが一番幸せなんだと思います」

学び、交流のプラットフォーム

ボックスショップ
ラウンジで開催された
ワークショップの様子

テントは社会人だけでなく、高校生の受験勉強の場としても活用され、異なる世代が同じ空間で学び、良い刺激を与え合える環境になっています。ただ、地域住民、特に高齢者の利用はまだ少なく、住宅地の活性化という目的に対して、地域のつながりが十分に生まれていない面も。そこで松村代表らは、高齢者が参加しやすいイベントや交流の場を作り、地域コミュニティの拠点としての役割を強めていく考えです。

「受験勉強には、家やカフェよりも集中しやすいみたいです。社会人と高校生が同じ空間にいることで、お互いにいい刺激を受けているようですね。最近は営業職の人たちの利用も増えています。テレワークが普及して、働き方がどんどん柔軟になっているのを感じます」

「でも、課題もあります。地域の高齢者の利用があまり進んでいないんです。住宅地の活性化のために作られたのに、利用者の多くが外から来る人ばかり。高齢の方には『自分には関係ない場所』と思われがちなんですよね。そこで、気軽に来られるイベントを増やそうとしています」

テントは仕事場としてだけでなく、地域の課題を共有し、解決のきっかけを生む場としても期待されています。個人では難しい問題も、ここで相談しながら仲間を見つけることで、解決の糸口が見えてくることも。住民同士がつながる場を持つことが、孤立を防ぎ、地域全体のウェルビーイング向上にもつながるはずです。

「地域の問題って、一人で気づいても解決するのは難しい。でも、話してみると、意外と同じことを感じている人がいて、一緒に動く仲間が見つかったりするんです。例えば、『この横断歩道、危ないよね』って話をしていたら、誰かが『じゃあ、町内会に相談してみようか』って動き出すこともある。テントはそういう『場』を提供する可能性があります」

団地の広場を活用した
ツナガルナルセの様子

テントの取り組みのひとつとして、入居する団地の広場を使ったマルシェがあります。その『ツナガルナルセ』は、より多くの人が集まり、自然な交流を生む場を提供することを目的に4年前から始まりました。月に1回程度、年間を通じて実施しています。

「コワーキングスペースは一人で作業するには最適ですが、利用者同士が自然につながることは意外と少ないんです。スタッフを介した会話やキッチンでのちょっとした交流はあっても、一緒に何かを始めるきっかけにはなりにくくて」

「だから、マルシェのような場がとても大切なんです。最初に幕張でコワーキングスペースを作ったときも、住民の要望でマルシェを開いたら、ハンドメイド作家やシェアキッチンの利用者が集まり、自然な交流が生まれました。その成功を活かして、町田でも広場を使ったマルシェを始めることにしました」

「ちょうどいい」町 包容力に感謝

松村代表

松村代表はこのUR都市機構による取り組みが縁で、町田に関わりを持つようになりました。街づくりの事業を営む中で、さまざまな環境を見てきた松村代表の目に町田はどのように映っているのでしょうか。

「町田って、本当に『ちょうどいい』まちなんですよね。都会の便利さもあるし、ちょっと足を伸ばせば自然もある。買い物や飲食の選択肢も多いし、交通の便もいい。それでいて、都心ほどの喧騒はないから、落ち着いて暮らせるんです。ポテンシャルはとても高いと思います。ただ、『今の町田が最高?』と聞かれたら、その先はまだあると思いますが(笑)」

町田市では、まちだの「ひと×まち」のエネルギーが成長し、未来への可能性や期待感がどんどん膨らんでいく様子を、ロゴマーク「いいことふくらむまちだ」で表現しています。松村代表は何を通して「いいことふくらむまちだ」と感じていますか?

「町田は外から来た人を受け入れる包容力があり、新しいつながりが生まれやすい環境がありますね。実際、私も町田出身ではないのですが、仕事で関わるようになってから、すぐに馴染むことができました。『面白いことならやってみなよ』という雰囲気があるんですよね。なので、『多様性でいいことふくらむまちだ』や『交流でいいことふくらむまちだ』という表現が合っているのではないでしょうか。町田はさまざまな人を受け入れ、交流を通じて成長し、活気を生み出しているまちなんです」

シェアキッチンから広がる夢
町田っ子のタルト販売

シェアキッチンを利用して作られたenn.のタルト。
特徴は生地の厚さ
enn.の土井さん

テントは、もうひとつの「顔」としてシェアキッチンがあります。「飲食店営業」「菓子製造業」「そうざい製造業」の営業許可取得済みのキッチンを、ランチやカフェの営業・オンライン販売・イベント出店・ケータリングなどの製造拠点として提供しています。普段は市内の飲食店に勤務する土井綾人さん(enn.)は昨年から「タルトの製造・販売」のために利用しています。

「お菓子作りは趣味だったんですが、友人に頼まれるうちに『販売できるかも?』と思い始めました。でも、いきなりお店を持つのは難しくて、キッチンカーや間借り営業も考えたものの、設備や営業の制約が多くてなかなか実現できなかったんです。そんなときに見つけたのがシェアキッチンでした。町田の『テント』は駅近で集客しやすく、週1回から無理なくスタートできたのがよかったですね。少しずつファンも増えて、今では他の店舗でも販売できるようになりました」

「特にタルトの『生地の厚さ』にはこだわっています。写真映えを意識すると、どうしても見た目のボリューム感などを重視したくなるのですが、タルトはやはり生地が大事なので、その点はゆずれないですね」

土井さんは生粋の町田っ子。土井さんは町田について「都会すぎず田舎すぎもしない、ちょうどよい雰囲気を持つまち」と表現します。

「町田って、本当に何でも揃っているまちですよね。飲食店やショッピングモールが充実していて、『町田に行けば何とかなる』という安心感があります。住んでいると、ほとんど町田の中で生活が完結しちゃうんですよ。それに、駅周辺は賑やかだけど、少し離れると自然も豊か。例えば薬師池公園は散歩にぴったりで、都会の便利さと自然の穏やかさが共存している感じが魅力です。都会すぎず田舎すぎず、ちょうどいい雰囲気があって、住み慣れるとどんどん愛着が湧く。そんな心地よさが、町田に住み続けたいと思う理由なのかもしれませんね」

土井さんも利用する
シェアキッチン
TENT成瀬
団地活性化の取り組みにあたるUR都市機構が管理する「成瀬駅前ハイツ」の1階にあるコワーキングスペース、シェアキッチン、ボックスショップ。ステップチェンジ株式会社が運営し、2021年に開所した。

東京都町田市南成瀬1-2-1 成瀬駅前ハイツ2号棟102
042-785-4541
平日9:00-20:00・土日祝9:00-16:00 (GW、お盆、年末年始は休みの場合も)
HP:https://www.tent-naruse.com/

◆次回イベント
軒先DEツナガルナルセ
3月15日㈯11:00〜15:00 (雨天決行)
TENT成瀬の軒先
個性豊かな8人の作家が集結!
ワークショップや手作り作品の販売
キッチンでは美味しいご飯を提供
「作家さんとの会話を楽しめるひとときを、ゆっくり楽しんでください」
町田のタルト屋さん『e n n.』
 https://www.instagram.com/enn._cafe/
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