「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

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まちだでくらす

丘に暮らす
癒しのアルパカたち

更新日:2025.06.26

刑部登志子さん

町田市の郊外。豊かな自然に囲まれた静かな傾斜地に、8頭のアルパカが暮らしています。2019年にオープンした「まちだのアルパカ」には訪れる人々の心をそっと癒す温もりが満ちています。ここを運営するのは、市内で福祉事業を展開する有限会社Gの刑部登志子さんです。「いろんな命を見てきたからこそ、人を癒す存在の大切さがよくわかります。アルパカは、ただそこにいてくれるだけで意味があるんです」

経営者であり看護師でもある刑部さん

アルパカは、南米アンデス地方原産の哺乳類で、ラクダ科に属する動物です。「もふもふの毛」が特徴で、とても柔らかく高級素材としてセーターやマフラーなどに使われています。また「おだやかな性格」も人気の秘密と言います。

「この子が一番人に慣れているの。頭は触っちゃダメで、首ならOK。お尻はダメよ」

きらら、シナモン、ニコ、ミーヤ、イトーくん…敷地内でのびのびと暮らすアルパカたちについて、刑部さんは優しい口調でそう案内してくれました。2019年、「アルパカと共にある暮らし」を求め、町田市山崎町の一角にこの施設をオープン。きっかけは、戦争や社会不安が続く時代の中で強くなった「癒し」を求める気持ちでした。テレビで「イルカと並ぶ癒しの動物」と紹介されていたアルパカに心惹かれたと話します。

「土地を探して町田中を1年間、探し続けました。傾斜と竹林、川、そして北向きの涼しさ。寒さに強く、静かな環境を好むアルパカにとっては理想的な場所です」

可愛らしいアルパカ

栃木県の施設から譲り受けたアルパカは当初2頭。そこから子どもが生まれ、やがて孫も誕生し、今ではにぎやかな“家族”となりました。「まさか、こんなところにアルパカが…」。施設は一般道からも見えるため、通行人が足を止め、驚いた様子で覗き込むこともしばしば。刑部さんはアルパカのファンクラブを立ち上げ、定期的に開放日を設けたり、地域のイベントや福祉施設などに出向いてふれあいの機会を提供しています。子どもから高齢者まで、幅広い世代にとっての癒しの場になっているのです。

「見ているだけ、触れるだけで癒されますよね。力が抜ける感じがするでしょ。ただ、これまで大変なこともありました。一番の思い出は脱走。となりの家の緑を食べてしまって…。あと、ああ見えて時速60キロメートルで走りますから、なかなか捕まえられないんですよ(笑)」

刑部さんは長野県の出身。親の薦めで看護師となり、アメリカでも看護師として病院に勤務した経験があります。一方で、「自分がやりたいことをするには起業するしかない」と考え、2004年に有限会社Gを設立しました。

「訪問看護をする中で、高齢者の方が安心して過ごせる居場所が必要だと痛感しました。それをつくるのが私のミッションだと。自宅での穏やかな最期を支えるかたちを届けるために、当時民間の訪問看護ステーションが少ない中で起業を決意しました。私自身が『おばあちゃん子』だったからか、高齢の方が好きなんですよ。アメリカでも最初にできた友達は、おばあちゃんでしたから」

公道から見ることができるアルパカ「牧場」

設立から22年が経ち、今では訪問看護や訪問介護にとどまらず、高齢者支援、障がい者支援などさまざまな福祉事業、またクリニックや老人ホーム経営で地域社会に貢献しています。最近のニュースとしては、ベーカリーもオープンしました。拠点は市内に9カ所、スタッフは180人にのぼります。これだけの規模を運営するには、並々ならぬパワーが必要です。刑部さんの原動力はどこにあるのでしょうか。

「よく『このエネルギーはどこから来るの?』と聞かれます。私がやっているのは『考える時間を短くすること』。あ、これをやろうと思ったら、すぐに動く。迷わず瞬時に『はい、やります』と。アルパカのときも『飼いたい!』って思った瞬間、すぐに牧場に電話をしましたから(笑)」

ユーモアあふれる刑部さんですが、看護師としてこれまで多くの命と向き合ってきた経験から、その重みを深く受け止めてきました。6人の子どもに恵まれ、今では19人の孫が宝物。家庭でも命の大切さを伝え続けています。また、そうした経験をもとにこれまで2冊の本を出版し、現在も新作を執筆中とのこと。

「今年から来年にかけて、絵本とエッセイ集が大手出版社より発刊予定です。絵は趣味で10年ほど前から描いています。ある夜中にふと思い立って、描こうと思ったんです。ただ、その場に絵具がなくて、最初は化粧道具で描きました(笑)。でも、それで自分の心が解放される感じがして。以来、ライフワークとして描き続けています」

アルパカと笑顔の刑部さん

そんな刑部さんに、長年暮らす町田への想いを聞いてみました。

「やはり、“アルパカでいいことふくらむまちだ”、ですね。アルパカみたいに、そばにいてくれるだけでこちらがやさしくなれる。多くの人がアルパカとふれあって、やさしいまちになっていったらいいと思います」

そう語る刑部さんの背後では、今日もアルパカたちが、静かに寄り添っています。町田の片隅から、命の尊さとやさしさを発信し続けるこの場所は、これからも多くの人の心を温めていくはずです。時が経っても、変わらぬぬくもりを届けてくれる——そんな存在が、ここにはあります。

まちだのアルパカ

@kirara.alpaca.house
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