「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

まちだでたのしむ

農業って楽しい!を伝えたい
町田のブルーベリー農園から広がる、
新しいカルチャー

更新日:2025.07.03

B factory 高梨こずえさん

2025年4月に登場したブルーベリーフローズンヨーグルトソフトクリーム

自然に抱かれた忠生公園のほど近く、住宅街の中に広がるブルーベリー農園「B factory」。季節ごとに表情を変えるこの場所は、夏になるとブルーベリー狩りに訪れる人々の笑顔であふれます。週に2日だけ開くカフェでは、無農薬で大切に育てた作物を使った手作りのスイーツや、自家製のブルーベリーソフトクリームを提供。畑で育った恵みが、訪れる人の心をやさしく満たしています。

「うちは祖母の代から農家で、もともと農薬は使っていませんでした。忠生公園に近く自然が多いとはいえ、ここは住宅街の中にある都市農園。私が2015年から本格的に畑仕事を始めてからも、やっぱり農薬は使いたくないという思いがありました。畑に出ていると、微生物や虫、鳥たちの営みが体感として伝わってきて、そのサイクルの大切さを日々実感します。生態系を壊さず、環境に配慮した栽培を続けたい。そんな思いから、果実も野菜も、すべて無農薬で育てています」

そう話すのは、農園のオーナーであり、カフェの店主である高梨こずえさん。ブルーベリーは酸性の土壌を好む一方、一般的な野菜はアルカリ性の土を好むため、本来は一緒に育てにくい作物同士。けれど高梨さんは、工夫を重ねながら同じ畑で育てています。住宅街にあるこの農園には、細長い区画や三角形の畑が多く、大型の農機が入れないため、作業の多くは手作業。手間も時間も、通常の倍以上かかるといいます。

「手作業は大変ですが、剪定した枝などもゴミにはせず、粉砕・発酵させ、肥料として土に還す、サスティナブルなサイクルを大切にした畑づくりをしています。農作業の都合もあるので、カフェの営業は週に2日だけ。農園の繁忙期には一時お休みすることもありますが、農作業中心のスケジュールで、畑とカフェを両立しています」

ブルーベリー狩りは7月中旬から!
ソフトクリームの販売もスタート

ブルーベリー畑で育てているのは、「ハイブッシュ系」と「ラビットアイ系」と呼ばれる2つの品種です。ハイブッシュ系はぷりっとした大粒で、さっぱりした甘さが特徴。粒がくずれにくいため、ケーキのトッピングなどに向いています。一方のラビットアイ系は、ハイブッシュ系よりも皮が薄く、甘みがぐっと濃厚。木でしっかりと完熟させてから収穫することで、より甘くなり、ブルーベリーらしい味わいがいっそう引き立つそうです。

「カフェで販売している冷凍ブルーベリーは、この2つの品種をミックスしています。スムージーやジャムに使うなら、冷凍したほうが味がギュッと凝縮されて、より濃厚です」

と、高梨さん。2025年4月に登場したブルーベリーフローズンヨーグルトソフトクリームも、畑で収穫したブルーベリーをふんだんに使って開発されたもの。果実本来の甘みと酸味のバランスが絶妙で、ブルーベリーの濃厚な味わいがぎゅっと詰まった一品です。

カフェでは冷凍ブルーベリーを販売。200g入り、400g入り、500g入りの3サイズ

「ソフトクリームって、実は奥が深いんですよ。糖度が高すぎると固まらなくて、砂糖と果実の糖度のバランスをきちんと計算しないと、ちょうどいいかたさにならないんです。やわらかすぎても、かたすぎてもダメ。その調整がけっこう難しかったですね」

B factoryでブルーベリー狩りを体験できるのは、例年7月中旬頃からの約2週間。お子さん連れのお客さまのなかには、食育の一環としてブルーベリー狩りに来てくださるご家族もたくさんいるそうです。

「私自身、小さい頃から旬を肌で感じながら育ってきたように思います。たとえば『夏になると、お母さんにブルーベリー狩りに連れて行ってもらったなあ』という記憶が、やがて”ブルーベリーの旬は夏”という感覚として自然に刻まれていく。大人になったとき、ブルーベリー狩りの思い出と一緒に季節の記憶として心に残っていてくれたらうれしいですね」

日本には春夏秋冬の四季があり、花鳥風月を楽しむ文化があります。でも今は、テクノロジーや輸送システムの発達によって、季節に関係なくさまざまな作物が手に入る時代。とても便利になった一方で、『旬を感じる機会は減ってしまった』と高梨さんは感じています。

「旬のものを食べて季節を味わうことは、体にも心にもとても大切なことだと思っています。うちは露地栽培なので、育てられるのは基本的に旬のものだけ。でもだからこそ、目で見て、香りを感じて、味わって、五感を通して旬を感じてもらえたらいいなと思います」

ブルーベリー狩りは暑さが厳しい時期に行われるため、小さなお子さま連れや高齢者の方は午前中の収穫をおすすめします。7〜8月の間は収穫された新鮮なブルーベリーも販売中

農業にも自由な発想と
アート的な視点を取り入れたい

農園の繁忙期を除き、毎週水曜と土曜に営業しているカフェ。屋号でもあり、店名でもある「B factory」には、さまざまな意味が込められています。

「“B”はブルーベリーの“B”でもありますが、他にも、ベイク(Bake)、バター(Butter)、バード(Bird)、バグ(Bug=虫)、ビー(Bee=ハチ)など、食や農業、自然の営みに欠かせない言葉には“B”が多いなと気づきました。なかでもハチは、農業にとってとても重要な存在。そうした“B”をキーワードにしたいと思って、この名前にしました」

“factory”には、もちろん“ブルーベリー工場”のような親しみやすさもありますが、それだけではありません。

「私は学生時代に植物や農業ではなく、アートを学んでいました。だから、“factory”と聞いて思い浮かぶのは、1960〜70年代のニューヨークにあった、アンディ・ウォーホルのファクトリー。アーティストや表現者たちが集まり、創作し、交流しながらカルチャーを生みだしていった創造の場です。私も、農業や食といった日々の営みに、もっと自由な発想やアート的な視点を取り入れて、新しいカルチャーを育てていけたらと思っています」

どこを切り取ってもフォトジェニック! 店内の席は1席4名×4席。混雑時には予約の方優先の1時間制になります。屋外にはペット同伴可のテラス席も(雨天時の利用は不可)

レシピのベースは、
シェアキッチンで教わった世界各国の家庭の味

学生時代には留学も経験し、これまでに世界19カ国を旅してきたという高梨さん。カフェで提供している軽食やスイーツなどのレシピには、旅先で出会った友人たちから教わった、家庭の味が息づいています。

「食べ物って、人と仲良くなるのにすごくいいツールだと思っていて。旅先でも観光地を巡るより、現地の暮らしに溶け込むほうが好きなんです」

美術を学んでいたこともあり、旅の多くはヨーロッパへ。美術館やギャラリーをめぐる中、とくに長く滞在したのがスウェーデンの第二の都市ヨーテボリです。ヨーデボリ大学で写真を専攻し、世界各国から学生が集まる寮で過ごした日々の中で、高梨さんは自然とシェアキッチンを囲むようになりました。

「それぞれの国の料理を教えてもらうのがとても楽しくて。今のレシピのベースになっているものも、あの頃の経験から生まれたものなんです。農園では、日本のスーパーではあまり見かけない珍しい野菜も栽培しています。スーパーにないなら、育てればいいじゃない?って(笑)。作りたい料理があれば、そこから逆算して、必要な食材の種を探して、畑で育ててみる。そんなふうにして、今の畑もメニューもできていきました」

自分の手で作るからには責任を持ちたいという思いから、使用する食材や調味料にも徹底してこだわります。朝採れ野菜たっぷりのサンドイッチやサラダに使われている調味料、ドレッシングもすべて手作り。乳製品アレルギーの方でも安心して楽しめるよう、マヨネーズには豆乳を使用するなど、細やかな配慮が行き届いています。

カフェの一角には、畑で育てた無農薬野菜の販売コーナーも。5月と12月には店内で野菜と花のマルシェを開催しています。写真右に映っているのは、赤トウガラシとスパイス、赤しそのふりかけ。こちらも高梨さんが手がけたもの

通学路にふわり香る、
ラベンダーの“花育”

ショーケースに並ぶスイーツの中でも、ひときわ華やかで目を引くのが、ラベンダーショートケーキ。畑で育てたラベンダーを使った、見た目にも香りにも癒やされる一品です。

「カフェの前の通りは小学校の通学路になっているので、”花育”というほど大げさなものではないけれど、子どもたちが花を見て好きになってくれたらいいなと思って、店のまわりに花壇をつくっています。ラベンダーの香りを幼いころにかぐと情操教育にも良いと聞いたことがあるので、子どもたちが通るたびにふわっといい香りがして、心が穏やかに育ってくれたらうれしいですね」

実はこのラベンダー、畑を整備している際、風船についたまま飛んできた種から育ったものなのだそう。

「山梨県の北杜市から飛んできたもので、風船にはラベンダーの種がついていました。ちょうどラベンダーを買おうと思っていたタイミングだったので、これはラッキー!と思って育て始めました。何気なくその話をインスタに投稿したところ、3年ほど経った頃に、風船を飛ばした女の子がお母さんの携帯でその投稿を見て「これ私の手紙だ!」と気づき、連絡をいただきました。北杜市からわざわざ町田に遊びに来てくださり、今でも年賀状のやり取りを続けています」

ショーケースには無農薬野菜や果実を使った手作りスイーツとデリが並びます

夢は小規模農家を増やすこと!
新しい農業の形をB factoryから

日本の食料自給率の問題は昔から指摘されていますが、高梨さんのご近所でも、高齢化により小規模農家が減っているそうです。大規模農家で新規参入するのはハードルが高く、新しく農業をやりたいという人がいても、さまざまな問題でなかなか参入できないのが現実です。

「だから、まずは小規模でもいいので、農業をやってみてほしいと思っています。こうした小規模農家のお店が全国に増えれば、輸送にかかるコストや環境負荷が減り、新鮮な野菜を食べられます。しかもその土地にあった野菜を育てられるので、地域ごとに適した伝統野菜を楽しめるのもいいですよね」

仕事として農業を目指すなら、「警察官のようにかっこよくて憧れの職業だと思ってもらえなければ、やりたいと思う人は増えません」と高梨さんは話します。

「この農園とカフェを拠点に、新しいカルチャーとしての農業のおもしろさを伝えていきたいと思っています。単なる産業としての農業だけじゃなく、それ以上に楽しいことがあるんだよ、と。そういう意味で、このお店が栽培から加工、販売までを一カ所で行う第六次産業のモデルショップとして、新しい農業の形を示せたらうれしいですね。私自身の経歴や視点を活かし、さまざまな角度から農業の魅力を提案していきたいと思っています」

写真左から時計まわりにブルーベリーレアチーズケーキ、ブル−ベリークランブルマフィン、ラベンダーショートケーキ。畑で育った素材の味わいを活かした、見た目にも楽しいスイーツです

アートは自然から生まれている!
町田で育ち、表現と植物に惹かれた原点

町田生まれ、町田育ちの高梨さんが感じる地元の魅力は、美術や表現に触れる機会が多いこと。町田市のロゴマーク「いいことふくらむまちだ」に添えたい言葉は、”思いやり”だそうです。

「ラベンダーの香りを感じて、思いやりのある人に育ってほしい。そんな願いを込めました。いま振り返ると、まるで人生の“伏線回収”みたいなんですが(笑)、大学時代に出会った教授の『すべてのアートは自然から発生している』という言葉が、ずっと心に残っています。たとえばクラシック音楽は鳥のさえずりから生まれたし、彫刻や文学も自然の営みから始まっているんだよと聞いたとき、とても腑に落ちたんです」

そんな自然とのつながりは、今の暮らしの中にも息づいています。畑にいることが多いという高梨さんは、スケジュールに少し余裕があるときにお客さんを招いて、「野鳥の会」を開いているそう。季節ごとに見られる鳥の種類はまったく違うといいます。

「春になるとうちの畑にはジョウビタキがやってきます。とても小さくて人懐っこく、畑で働くスタッフも癒やされています。自然と関わることが多いのも、町田の魅力のひとつですね」

大学の卒業制作ではセルフポートレートをテーマにしていた高梨さん。当時流行していた“女子カメラ”の流れに興味があり、荒木経惟さん、長島有里枝さん、ヒロミックスさん、蜷川実花さんといった作家たちについて論文を書いたそうです。

「そうした写真には自然や植物をモチーフにした作品が多く、あの頃から植物への関心がじわじわと育っていたのかもしれません。いろいろと回り道もしてきましたが、今思うのは――案外、無駄なことってなかったな、ということですね(笑)」

B factory
TEL 042-851-9213
住所 町田市山崎町1877-1
HP http://bbbfactory.com/
@bfactory_machida
@bfactoryblueberry
Information
ブルーベリー収穫体験コース
(要予約)
収穫体験は要予約。1グループ6名まで。詳細はお問い合わせを。

●たっぷりたべたいコース(その場でたくさん食べたい食べ放題収穫体験コース40分)
大人(中学生以上)1980円
小学生 1100円
幼児(4才以上)880円

●おもちかえりコース(たくさんお持ち帰りしたい収穫体験コース60分)
入園料に加え、収穫したブルーベリーを100g216円で量り売り販売

入園料
大人(中学生以上)880円
子ども(4才〜小学生まで)510円

●ブルーベリー購入のみ
ブルーベリー 100g/324円 量り売り
(1Kg以上注文される場合は前日までに連絡)

※料金はすべて税込価格です。

撮影/上樂博之 取材・文/小山まゆみ
SHARE