「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

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まちだでたのしむ

『陶芸体験』の楽しさが伝播し、
遠方からも多くの人が『陶shiraku』へ。
大事にしているのは、人の手による味わいと創造性

更新日:2024.7.11

一法師いっぽうし艸生そうせいさん

四季折々の自然が広がる芹が谷公園内の小道を進み、住宅街につながる階段の中腹で右折すると、小鳥のさえずりが聞こえる閑静なエリアに『陶shiraku』の文字が見えてきます。2001年に町田で陶芸教室をスタート。現在、「陶芸」と「手づくりシルバー」を体験できる人気の教室には、都心や千葉県、埼玉県などからも、多くの人々がものづくりを楽しむために訪れています。

手作りならではの味わいある器がずらり

「一番最初は町田の大通りにあるビルの中に教室を開きましたが、手狭になったため、そのビルの裏手に移動しました。しかし、そこもまた手狭になり、現在の高ヶ坂に移転しました。町田に教室を構えた大きな理由は、小田急線とJR横浜線の2つの駅がある至便性からでしたが、遠方からも来てくださる方がいるというのはまったくの想定外でした」

と、話すのは、『陶shiraku』のオーナーで、講師を務める一法師いっぽうし艸生そうせいさんです。一法師いっぽうしさんは大手企業を退社し、20代後半で陶芸家を目指したという経歴の持ち主で、1999年に現代陶芸展・西日本陶芸展に入選。以来、神奈川県美術展、朝日陶芸展、伝統工芸展などに多数入選し、東急本店では個展も行っています。

「陶芸はほぼ独学です。サラリーマン時代に自分のやりたいことを見つけたいと思い、もともと好きだったアートに触れるため美術館によく通っていました。あるとき、とある陶芸作家の作品を見て心を惹かれ、弟子入りを試みたのですが、諸事情により断念。その後、陶芸を始めるため故郷の熊本に戻り、習うというよりは、少しずつ陶芸に携わるようにしながら、徐々に自分のものにしていったという経緯です。
関東で再び陶芸に取り組むことにした理由は、藤沢市在住の陶芸作家の作品を好きになったため。その方から習うのを機に、30歳の頃に相模大野で生活するようになりました。陶芸教室を始めたのは、その4~5年後のことです」

ものづくりの楽しさを伝えられれば
その輪は自然と広がっていく

『陶shiraku』でとりわけ人気があるのは、初心者でも楽しめる『陶芸体験』で、一法師いっぽうしさんによると、参加者の年齢層は学生さんを中心とする若い世代が3分の2を占めるのだそう。

「『陶芸体験』の内容は、他の陶芸教室に負けない自負があります。色が豊富にあること、作れる器の種類が多いこと、そして、2週間ほどで焼き上がったものを受け取れることが、『陶shiraku』の強みです。通常は焼き上がりまでに1カ月かそれ以上かかる教室が多い中、ものづくりを体験したときの感動が残っているうちに、完成した作品が手元に届くので、やはり得られる満足度が違います。ものづくりの楽しさをより一層、感じられる瞬間でもあり、リピ-ターの方が多いのも、体験の楽しさを実感していただいている証かもしれません」

選べる色の種類が多いのも、『陶shiraku』ならでは

『陶芸体験』は最大で3回まで受けることができ、回ごとにものづくりの楽しさが伝わるよう工夫されています。1度体験された方が、次はお友だちを誘って参加することも少なくないそうで、料金がお手頃価格に設定されている点も、誘いやすさの要因になっているよう。

「ものづくりの楽しさが体験された方にきちんと伝われば、その輪が自然と広がっていくことを実感しました。とくにインターネットが普及した今の時代は、その効果を強く感じます。とりわけ若い世代の方々は、YouTubeやSNSを通じて情報を発信されるので、伝播の速さが格段に違います。誰かが投稿した画像や動画を見て、自分も陶芸に挑戦してみたい!と伝わっていく。ものづくりの中でも陶芸は注目度が高く、旅先などでも気軽にトライできるベースがあるのも、教室に参加しやすい理由のひとつだと思います」

大量生産の時代だからこそ
手作りの価値を伝えたい

『陶芸体験』では、一法師いっぽうしさんが大事にしていることがあります。それは、手作りならではの味わいと価値です。

「自分で作るものだから、多少イビツでもいい。そこに手作りならではの魅力があると思うんです。今の時代は物が増えすぎて、食器ひとつとっても、見た目がきれいで安価なものが大量生産されています。今の時代はAIやシステム化が進み、自動化されることが増えていますが、その反面で人が関与し、手作業ならではの温かみや独自の表現を求める声も高まっているのではないかと感じています。そんな時代だからこそ、自分の手で創り出した独自の形や表現力を大事にしたい。そんな思いで陶芸教室を続けています」

教室での時間は限りがあるため、他の教室では講師の方がある程度、手を加えてくれることが多いそうですが、『陶shiraku』では、極力そのようなことはしません。手を加えるのは、重要なところだけ。それ以外は体験者自身で自由に作業することを重視しています。そのため、自分の作品を完成させたときの満足度も格別。
好きなこと、やってみたいことを楽しく体験できる雰囲気が人から人へと伝わり、近隣だけでなく、遠方からも多くの人が『陶shiraku』を目指して、訪れる。ここにはそんな光景が広がっていました。

一つひとつの表情が違う手づくりの器たちには、
それぞれに独自の魅力が詰まっています

その日のうちに完成する
シルバーアクセサリーも好評

そして、もうひとつ、一法師いっぽうしさんが素材のおもしろさに惹かれて、教室に取り入れたのが、『手づくりシルバー』の体験です。純銀の粘土で形を作り、800℃で焼くことで不純物が燃え、99.99%のシルバーに変わるというのが、そのプロセス。体験教室ではリングやペンダントトップなど、自分だけのシルバーアクセサリーを完成させることができ、とくにクリスマスシーズンになると、予約が殺到するそう。

磨けば磨くほど輝きを増す純銀粘土のシルバーアクセサリー

「純銀粘土は、自分の指で作るので、どんな形も自在に作れます。デザイン見本は100種類以上あり、その中から好きなデザインを選んでいただくことも、ご自身でアレンジして作っていただくこともできます。純銀粘土の特徴は、焼いたときに白く焼き上がること。それを磨くと輝きが増すギャップがおもしろく、その日のうちに日常使いできるアクセサリーが完成することから、みなさんに喜んでいただいています」

自由自在にデザインでき、初心者にもおすすめ

作家活動を始めると同時に
『陶shiraku』ブランドの歴史を作る

ものづくりの楽しさを、多くの人に伝えている一法師いっぽうしさんですが、脱サラをして、好きなことを仕事にした今、次の目標は?

「好きなことを仕事にすると、逆にマイナス点も見えてきます。やはり仕事ですから、もっと極めなければ、好きなことを自分の楽しさにすることは難しい。時間にも追われがちです。しかし、ようやく自分の中に余裕ができてきたので、これからは作家活動にも注力していきたいと思っています。そのため、隣の相模原市に手作りのアトリエを建設中です。やはり、ものづくりは作り手が楽しんでいないと、良いものにはなりません。時間はかかりましたが、ようやくその段階にきて、気持ちは盛り上がっています。目指しているのは、教室や販売を含め、陶芸に関わるブランドを構築すること。私自身としてではなく、『陶shiraku』としてのブランドをつくり、自分の手でその歴史をスタートさせたいと考えています」

「これは願望ですが、町田にもアート的なことを楽しめるエリアが出現するといいなと思っています。都心と田舎の中間にあるのが、町田の魅力。芹が谷公園にも野外彫刻などがありますが、自然や風景そのものが芸術的な魅力を放つ場所があると、さらに魅力が増すのではないでしょうか」


PROFILE
1965年、熊本県生まれ。大手企業を退社後、陶芸家を目指す。1999年現代工芸展・西日本陶芸展入選。2000年西日本陶芸展・文部大臣賞受賞。現代陶芸展、伝統工芸展などに多数入選。独自の技法を用いて、土の風合いや味わいを活かした作品を制作している。
撮影/上樂博之 文/小山まゆみ
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