物語のある町田のカフェ
更新日:2024.7.25
味、雰囲気だけでなく、物語も楽しめる―。町田にはそんなカフェがたくさん。今回は大蔵町、玉川学園、成瀬、小山町にある店舗を紹介。それぞれのストーリーを知れば、もっと好きになれるかも
大蔵町 Beans Farm
28年前にオープンした「Beans Farm」は、現オーナー・朝倉颯さんのご両親が始めたお店でした。2人が働く姿を幼いころから見ていた朝倉さんは、高校3年生のときに進路を決める際もその姿が頭に浮かび、飲食関係の専門学校に進むと決めたそうです。卒業後は別の飲食店で働き、30歳で家業を継ぐ予定でした。しかしながら、2020年に新型コロナウイルスが流行したこともあり、27歳の時点で、早めに家業を継ぐことになりました。
両親の代から「ほそぼそ」と続いていたお店を、コロナ禍を転機に、2020年10月にリニューアルオープンすることにしました。しかし、当時は来店客が少ないのが「コロナだからなのか、知名度がないからなのか」よく分からず困りました。「とりあえず、やれることをやろう」と考えた朝倉さんは、まずはこれまで週2~3回だった営業日数を増やしたり、広報にも力を入れるようにしました。
昔から来ているお客様のためにも、今までのお店のスタイルを大きく変えないようにしつつ、その中でも自分のやりたいことを実現していったといいます。「父が焙煎し販売しているコーヒー豆は、袋のデザインを変えて新たな販売戦略を行ったり、喫茶店としての新メニューとして、プリンアラモードのレシピを父と打ち合わせたりしました」。その成果あってか、今ではプリンが有名なカフェとなりましたが、実はもともとはランチがメインで、プリンはセットデザートの一つだったといいます。おいしさを追及する中で、プリンもアップデートされていきました。
その看板メニューともなったプリンはクリームチーズを使っているため、固めでありつつ、口当たりが滑らかで、むちっとした食感となっています。カラメルは苦めで、プリン自体の甘さとのバランスを重視しています。こだわりが詰まったプリンはもちろん、コーヒーにもばっちり合います。
リニューアルにあたり、最も苦労したことは「集客」だったと朝倉さんは話します。「アクセスの悪さ、パッと見でカフェとわかりにくい外観ということもあり、知ってもらうということはとても重要な課題でした」。SNSを活用し広報に力を入れ、店頭でSNSを見せると頼むことができる限定メニューを作るなど、マーケティングに力を入れていたといいます。「トライアンドエラーの毎日です。新メニュー開発したりして、それが良い反応をもらえたりするととてもうれしい。足を運んでもらうための工夫は絶えずに行っていきたいと思います」
そんなカフェの夏に一番おすすめのドリンクは「水出しのアイスコーヒー」です。ダッチ式(オランダ式)という抽出方法で、6~8時間かけて一滴ずつコーヒーを抽出しています(提供期間は4月~10月)。また、季節ごとの食材を使ったメニューを展開しており、7月からは桃のプリンアラモードが始まるので要チェックです。「プリンアラモードはレトロな器がポイント。フルーツは季節ごとに変わります。大人も子どもも楽しめる、みんなが好きな王道の商品です」
玉川学園 ファインエステート
1998年に開店し、今年で26年目を迎えたカフェ「ファインエステート」。玉川学園で生まれ育ったオーナーの小笠原直樹さんが、実家の一部を使って開店しました。というのも実は、こちらのお店はもともと小笠原さんの祖父が昭和48年から7年ほど営業していた「レストランもみの木」。そのお店の閉店から10年を経て、「紅茶を楽しめるお店」としてオープンすることになりました。
ずっと紅茶が好きだったという小笠原さん。オープン当時は近隣に紅茶を飲めるお店が少なく、紅茶はどこかハードルが高い存在だったといいます。「もっと気軽に楽しんでもらいたい。その魅力を伝えたい」。お店にはそんな小笠原さんの思いがたくさん詰まっています。今やメニューは、トッピング・茶葉の違いなどによる細かい味の差などを含めると100種類以上にも及ぶそうです。
盛り付けたドリンクがメディアにも取り上げられ、その名が広く知られるようになりました。その「盛り」のきっかけは、トッピングにマシュマロを使った、「マシュマロミルクティー」という商品です。オープン当時からある商品ですが、今のようにカラフルに盛りつけられるようになったのは2005年頃。まだ「SNS映え」などない時代でしたが、口コミなどを通じてお客様からの反響が良かったそうです。そこからいろいろとトッピングするようになり、2010年ごろには縦にどんどん積み上げるスタイルに進化したそうです。
「縦」に積むことへのこだわりについて小笠原さんは「三角すいが好きだからです。バランスを求めた結果が今の形なんです」と語っています。「何よりも、お客様に喜んでいただきたいという思いが最も強いです。甘いものは人を幸せにするので、限られた時間の中でお客様に楽しんでいただきたいと思っています。美味しいものは共有したくなるものですから、誰かに教えたくなるようなものを提供し、人が人を呼ぶものにしたいのです」
近隣に玉川大学があることから、大学関係者の方々が多く来店されているとのことです。テレビへの出演を契機に、市内外を問わず遠方から足を運ぶお客様も増えたといいます。そんな中で、小笠原さんが感じたのは「人の温かさ」です。特に強く感じたのは、コロナ禍のときです。外出自粛などで店舗経営が厳しかった当時、SNSで状況を発信したところ、多くのお客様がテイクアウトを目的に足を運んでくださいました。時折、行列ができることもあったそうです。「大学生の方々が、自身のアルバイト代で毎日買いに来てくださって。それがとても嬉しくて、ありがたいと感じました。さまざまな方々との出会い、ご縁によって成り立っている仕事。交流によって、考え方や視野も広がっていると感じています」と語っています。
そんな小笠原さんによる夏のおすすめは、オレンジアイスティー、チョコミントトッピングのミルクティー、そしてスイカを大きくカットしてトッピングしたミルクティーです。
成瀬 きみどりカフェ
成瀬駅から市立総合体育館の方向へ歩いた先にある、「きみどりカフェ」。やわらかい色の木材とドライフラワーが印象的な店内に、美味しい香りが広がっています。
「黄色」が好きな大橋美里さんと、「緑」が好きな篠原里佳さんが2人で店を切り盛りしています。2人はもともと記念日などの家族や親子を撮影するカメラマンでした。店内のすてきな内装は、その頃一緒だった仲間が手作りしてくれたものだといいます。壁のレンガや、カウンターのタイルは「本物」。壁や天井も自分たちで塗ったそうで、お店にいると伝わってくる温かさは、このような素材や手作り感のためかもしれません。
カメラマンとしての仕事は「とても楽しかった」と述べます。しかし、カフェを始めることを決意したのは、楽しさの隣にある寂しさが理由でした。当時、多くの人が子どもたちの成長に合わせて撮影をしに来てくれました。ところが、子どもが成長するとその機会は減っていきます。お客様との出会いを大切にし、交流の時間が大好きだったからこそ、そのように縁が途切れてしまうことに寂しさを感じるようになりました。
「でも、カフェなら」。年齢や性別に関係なく、これまで知り合った人との縁を続けられると考えたのです。そのような場所を開業してもうすぐ7年がたちます。ちなみに、この店を成瀬のこの場所に構える決め手となったのは、通りの桜並木だそうです。
「誰にとっても、この場所があなたの居場所になってほしい」。そんな思いを込めて作った店舗に、5年ほど前から通っている中学生がいます。常連である彼の母が店主2人とコミュニケーションを重ねる中で、「ガラスに絵を描いて」という話になりました。絵を描くことが大好きだった少年はさっそく取り組み始め、今では月替わりで季節に合った絵を描いています。お店の雰囲気アップに一役買っており、「店の窓ガラスの専属絵師」とも言われています。「色使いがだんだんと変わってきている。始めは踏み台を使って描いていたのに、今では要らなくなった」と大橋さんも少年の成長を嬉しそうに語ります。
おすすめのメニューはパフェです。月替わり+期間限定の品を提供しています。6月は月替わりメニューがクリームソーダパフェで、期間限定メニューがあじさいパフェとさくらんぼパフェでした。ゼリーの爽やかさと冷たいアイスに、じめじめとした季節で重くなりがちな気持ちも軽くなります。ちなみに、通常のポイントカードの他に「パフェ専用のスタンプカード」があります。毎月1つずつ押してもらえるもので、ためるともらえるプレゼントもなかなか豪華だそうです。夏はパフェの種類が増えるそうです。「夏休みに子どもを連れて何度来ても楽しめるように」という心遣いからです。今年は何種類でしょうか?全部食べてみたいですね。
きみどりカフェ
町田市南成瀬6-12-13-102042-865-1501
11:00 〜 17:00
定休日:月曜※月曜祝日の場合は翌火曜休み
HP https://kimidoricafe.com/#about
@kimidori_cafe
小山町 三ツ目珈琲
最寄り駅は橋本。町田街道沿いの「三ツ目交差点」にあるカフェ、その名も「三ツ目珈琲」。「看板」とも言えそうな店頭のインパクトある自販機を、「二度見」したことのある人も多いのではないでしょうか。
バリスタの専門学校に通っていたオーナー、吉田衛さんが日々カフェ巡りをする中で気に入ったのが、この落ち着きのあるテイストだったと言います。店舗を始めるにあたり、それに加えた要素が「ニュージーランドスタイル」です。そのきっかけは吉田さんがスキーのインストラクターをしていた頃。雪を求め日本に来ていたニュージーランドの男性と意気投合し、ワーキングホリデーを利用して現地へ行きました。資格を取る目的でしたが、あいにく2日目に足をけがしてしまいました。ただ、それが逆に「気付き」につながりました。おかげでニュージーランドのゆったりと流れる時間を存分に味わえたそうです。「夕焼けを見ながらビールを飲んだり、最高でしたね」と振り返ります。そんな実感で得た体験が店舗作りに生かされました。
今年の6月に7年目を迎えました。実は吉田さんはもともと会社員で、いわゆる脱サラをしての開業です。初めて事業を始める際、居酒屋も選択肢として考えていたそうです。しかし、「お酒は好きだからこそ、飲む側でいたい」と考えを改め、昼間からゆっくり楽しめる店としてカフェを選びました。もう一つ、カフェを選んだ理由として「コーヒーは豆の鮮度が一番大事だと思うので、常に新しい状態の豆を用意して飲みたかった。ただ、1人では豆を消費しきれなかったから...」と笑います。
そんなカフェのおすすめは、NZのコーヒーロースター、オールプレスのエスプレッソブレンドを使用したコーヒーです。飲み易い濃さに調整してくれます。リラックスできる香りで、吉田さんが「毎日飲みたいコーヒー」を求めた形です。アイスコーヒーもすっきりとした酸味とフルーティーな香りを楽しめます。
また、ハンバーガーも非常におすすめです。「ニュージーランドといえば!」ということで、ラム肉を使ったハンバーガー。パティはラム肉が苦手な方でもその臭さを感じさせない、でも肉そのものの美味しさを味わえる丁度よいバランスを追求。バンズも肉肉しいパティに合うよう、全粒粉入りの手作りで、サクッと焼き上げています。かなり厚みのあるバーガーですが「思い切ってバンズをつぶして、一口で全部の食材を食べてください」と吉田さん。この食べ方、おすすめです。荒挽きで肉由来のパティから、肉汁が溢れ出して口の中が喜びで満たされます。ガッツリと胡椒と野菜のおかげで、脂っこくもありません。素朴だけれど力強さを感じる味わい。これがニュージーランド流?なのですね!
三ツ目珈琲(ミツメコーヒー)
町田市小山町3669 1F042-865-1451
平日11:00~19:00(L.O.18:30)
土日のみモーニング 9:00~11:00
定休日水曜日
HP https://mitsume-coffee.foodre.jp/
@mitsume_coffee
いかがでしたしょうか。お気に入りになりそうなカフェは見つかりましたか?美味しいスイーツやコーヒーを楽しみつつ、ストーリーを思い浮かべ、素敵なひとときを過ごしていただけたらと思います。