「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

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まちだではたらく

町田で紡がれる自然の色合い。
地域に支えられ生まれるLa Manoの手仕事

更新日:2024.12.19

クラフト工房 La Mano 施設長 高野賢二さん

竹林や栗、柿、ビワの木が立ち並び、木漏れ日がやわらかく差し込む、自然豊かな敷地にあるクラフト工房La Mano(ラマノ)。この工房は、障がいを持つ人たちの働く場として設立され、藍や草木などの天然素材を使って糸や布を染め、機を織り、刺しゅうを施し、紙に描いた、やさしさあふれる手づくり品を生みだしています。古民家を利用した温かなぬくもりに包まれた工房で、施設長の高野賢二さんにお話を伺いました。

機織り機は15機あり、織り手の人たちの手によって、丁寧に織り上げられていきます。
時間をかけて生まれたマフラーやストールは、まるで空気を含んでいるようなふんわりとやわらかな仕上がり。

1992年に設立された工房の成り立ちは、町田の緑山で開催されていた障がいを持つお子さん向けの造形教室に遡ります。

造形教室に通っていた支援学校の生徒たちが、学校を卒業し社会に出る際、障がいを持つ人々が活動する場の少なさに直面しました。そこで、造形教室の先生と保護者が中心となり、安心して活動できる場を作ろうと動き出したのが、取り組みの始まりです」

高野さんによると、La Manoは、単なる日中の活動の場ではなく、染め物や織物、刺しゅうなどの手仕事を通じて、社会で通用する製品を生み出す場を目指して設立されたのだそう。その思いを込めて、名前はスペイン語で“手”を意味する、“La Mano”と名付けられました。  

「設立当初、活動に必要な十分なスペースを確保するのに苦労しました。障がいのある皆さんとのものづくりにオリジナリティを加えるため、糸や布を天然素材で染めることにこだわったのですが、身近に自然があり、染色に必要な水場がある場所がなかなか見つからなかったのです。当時は障がいのある方に対する社会的理解も十分ではなく、大きな声を出したり、はしゃいだりすることもある皆さんが、周囲を気にせず作業できる広い場所を探すのは容易ではありませんでした」

染めは専用の作業場で行われています。
La Manoの人気製品である鯉のぼりは、自然染料を使った色合いが特徴。
深い青は藍、赤は茜、黄色は玉ねぎの皮から生まれたもの。

La Manoは
ものづくりに特化した福祉施設

そんな中、町田市に相談したところ、金井に3000㎡にわたる敷地で使われていない空き家があることがわかり、思いを伝えると、快く貸していただけることに。先代の大家さんは植物が好きで、敷地は豊かな自然に恵まれています。さらに、美術教員をされていた経験から、ものづくりへの理解も深く、惜しみない協力をしてくださったのだそう。

「工房は2024年で32年目を迎えました。少しずつ進化しながら、変わらず続けてこられたことには、やはり深い感慨があります。La Manoは、国の制度に基づくB型福祉事業に位置づけられているため、登録しているメンバー(利用者の皆さん)には給与が支払われています。2006年からは、染め物や織物、手刺しゅうに加え、アート活動もスタートし、現在、メンバーは46名、スタッフは22名が所属しています」

ものづくりに特化した福祉施設という特性から、スタッフの大半は学生時代にテキスタイル(織物、染色、服飾)やデザインなどを学んだバックグラウンドを持っているのだそう。高度な技術が求められる部分はスタッフが担うこともありますが、どの製品も7~8割くらいはメンバーの手が入っていて、皆さんが一緒にものづくりをしています。

草木染めの靴下はシルク100%。
赤色はコチニール(貝殻虫)と呼ばれる昆虫から得られる天然の染料を使った深みのある色合い。
右はアート作品。動物や鳥たちが生き生きとした存在感を放っています。

地域をはじめとする
さまざまな人の思いに支えられて

敷地内のユーカリの木がある小路を上ると、そこには見晴らしのいい畑が広がります。一角には、染料となる藍やマリーゴールド、製品に使う綿花が毎年植えられ、畑一面に青々と育つ季節の野菜も。畑の管理や敷地内の環境保全は20年近く地域のボランティアの皆さんが担っているといい、即売会などで得られる収益はLa Manoの活動に還元されています。

「La Manoがこうして活動を続けられている背景には、町田に住む地域のみなさんの協力が大きいと感じています。こちらから呼びかけるだけでなく、活動に興味を持ってくださり、『ボランティアを募集していますか』とお問い合わせをいただいたり、展示会に来てくださったお客様から、『何かお手伝いしたいのですが』と声をかけていただいたり。 当初は、メンバーのお母様方が空いている時間に製品のふさを結んだり、染め上がった手ぬぐいにきれいにアイロンをかけていただいたりしていましたが、今では地域の皆さんが手伝ってくださるようになりました。コロナ前には多いときで、年間延べ1000名近い方が手を貸してくださっていました」

La Manoがより豊かなものづくりの場を作り上げることができているのは、「地域の皆さんの温かい気持ちと、縁の下の力持ち的な支えがあってこそ」。そう話す高野さんは、地域社会やコミュニティに対して温かい思いやりを持ち、積極的に支え合う姿勢を大切にする方々が町田には多いと感じているそうです。

町田をモチーフにした藍染めの手ぬぐいが
「ふるさと納税」の返礼品に!

メンバーの皆さんが描いたイラストから型をおこし、一枚一枚手染めで仕上げている『藍型染手ぬぐい』は、La Manoを代表する製品のひとつとして人気があり、町田の名産品としても親しまれています。2024年からは、リス、ダリア、ジャズの3種類の絵柄をセットにして、町田市のふるさと納税返礼品に選ばれました。

「リスは、『町田リス園』を、ダリアは『町田ダリア園』をモチーフにしています。ジャズは『町田はジャズが盛んなまち』との言葉をスタッフが耳にしたことから生まれたデザインです」

町田らしいモチーフを使った藍型染め手ぬぐい。左手前からジャズ柄、ダリア柄、リス柄。

町田の名産品としては、ほかに藍染めのストールや織りのコースターとランチョンマットセットが選ばれています。

「La Manoでは、コースター作りの一環として、綿の種をさまざまな方にお渡しし、その種で育てた綿を収穫していただく取り組みを行っています。収穫された綿はLa Manoに持ってきていただき、メンバーやスタッフが糸を紡ぎ、織り上げ、コースターになります。この活動を『コットンプロジェクト』と呼んでおり、綿を提供してくださった方には、La Manoの製品と交換できる金券をお渡ししています。これがとても好評で、参加された方々からも喜ばれています」

と高野さん。La Manoでは、毎年夏と冬に『染織展』を開催しています。この展示会ではメイド・イン・La Manoの製品が販売され、毎回500名ほどの来場者を集める人気のイベントになっているそうです。綿の種は冬の『染織展』で配布されるとのこと。2024年の『染織展』はすでに終了しましたが、綿を育ててみたい方はぜひトライを!

『コットンプロジェクト』から生まれたコースターは、温かみのある風合い。

企画を通じて地域に貢献し、
市民の皆さんの貴重な場を目指して

そして、最後に、「町田市のロゴマーク『いいことふくらむまちだ』の前に言葉を入れるとしたら?」という問いに、迷わず「La Manoで、いいことふくらむまちだ」と答えてくれた高野さん。

「La Manoという場所が、障がいのある方々が働く場所という枠を超えて、町田の皆さんにも親しまれる場所になって欲しいという思いが、ずっとありました。La Manoが町田のコミュニティの一部として、自由に訪れたり、活動に参加したりできる場所になり、地元の人々によって心地よく、親しみやすい存在になれたらいいなと思っています。『染織展』のほか、工房での染め体験など、さまざまな企画を通じて地域に貢献し、La Manoが市民の皆さんにとって貴重な場所になることを心から願っています」

植物や樹皮、果実などから抽出された染料が織りなす色合いは、どれも独特で温かみがあります。化学染料にはない深みと透明感は、見るたびに心が和むようなやさしさを感じさせてくれるもの。La Manoで生まれた製品の一部は、薬師池公園の西園や観光案内所(まちの案内所 町田ツーリストギャラリー)で取り扱っています。また、直接、La Manoを訪れても手に入れることができるので、ぜひ足を延ばしてみてください。

クラフト工房 La Mano
TEL:042-736-1455
住所:町田市金井5-14-18
HP: https://www.koubou-lamano.com
@koubou_lamano
@クラフト工房 LaMano
INFORMATION
2025年草木染鯉のぼり・先行販売
日時:2025年1/11(土) 11:00より
※La Manoオンラインショップにて販売

La Manoまちなかギャラリー
場所:町田東急ツインズイースト館の2階正面入口
https://www.koubou-lamano.com/blog/la-mano
※La Manoのアート作品などの展示

La Manoオンラインショップ
https://lamano-shop.com/

クラフトLa Mano「初夏の染織展&アートギャラリー」第60回
日時:2025年5/30(金)~6/2(月) 10:00~16:00
撮影/上樂博之 取材・文/小山まゆみ
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