モデルやSNSでの活動も充実。
次なる目標は、
当事者としての思いを多くの人に届けること
更新日:2024.08.01
玉置陽葵さん
ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーの当事者である玉置陽葵さんは、町田市内の都立高校に通学していた高校時代から車いすJKとしてSNSなどで活躍。TikTokやInstagramでは、前向きな姿勢で日常生活を楽しんでいる様子が発信され、同世代をはじめとする多くのフォロワーから支持を受けています。リハビリや患者会活動などに積極的に参加すると同時に、障がい者モデルとしても活躍の幅を広げている玉置さんは、2024年の春から大学生として新たなスタートを切りました。
「大学では社会福祉学を専門的に学んでいます。高校の頃からずっと社会福祉を学びたいと思い、勉強に励んできたので、興味のある分野を深掘りして学べる今は、授業がとても楽しくて刺激的です。4年生になったら社会福祉士の国家試験にチャレンジしたい。将来的にも社会福祉士として働けたらなと思っています」
生活の中で困っている人の支援をするのが、社会福祉士の大まかな仕事ですが、貧困や障がいのある人、高齢者、子どもとその家族など、対象になる人の幅は広いとのこと。なかでも玉置さんが専門的に学びたいのは障がい者福祉の分野だそうで、大学一年生の今は授業のコマが多いため、週に5日、毎日大学に通っています。
「一限がある日は、朝6時半には家を出ます。家から大学までは片道2時間弱。ラッシュの時間帯なので、毎日、すし詰めの電車の中で押しつぶされています(笑)。人混みの多い駅での乗り換えがありますが、大学の最寄り駅では私が到着する時間にあわせてスロープを出してくださるので、スムーズに通学できるようになりました」
かわいいもの全般が大好き
ファッションショーの出演も
モデルとしての活動の一部
玉置さんは、障がい者モデルとして「porte」というwebマガジンで活躍していました。オーディションに合格したのは、高校1年生の頃。初めて挑戦した年は残念ながら不合格でしたが、翌年に再挑戦し、見事に合格。そのときの様子は、ABEMA的ニュースショーの密着映像でも取り上げられました。現在、モデルとしてのキャリアは4年目に入り、これまでに東京都が主催しているファッションショーに3回出演。そのほか、トークショーやweb CMなどにも出演しています。
「ファッションショーでは、車いすの人が着ることを想定してデザインされた服を着用することが多いです。たとえば、座ったときにきれいな形が出るものや、邪魔にならないデザインなどがあります。車いすユーザーさんが抱える悩みに寄り添った服も多く、短い丈のスカートをはきたいけれど中が見えやすいといった悩みや、座ったときにパンツの丈が上がってしまうことに対応した服をデザインしてくださったデザイナーさんもいるんですよ」
教育現場で
障がい当事者の思いを届けたい
2023年は受験に備えて活動を少し控えたそうですが、大学生になった今は、やりたいこともいろいろあるという玉置さん。個人のSNSにも力を入れて頑張っていて、応援のメッセージや『勇気をもらいました』といったメッセージが届くと、うれしさもひとしおだと言います。そして、直近の目標は、講演会活動などを通じて、当事者としての思いを多くの人に届けること。
「大学に入ったら、講演会活動の幅を広げたいと思っていました。高校生のときにも患者の会の役員として、小さな規模の講演会をやらせてもらう機会があったのですが、これからは教育現場などで、障がい当事者の思いを届けられるような活動をしたいと思っています」
「私がいま一番やりたいのは、障がい当事者と普段関わりのない人に、当事者の生活や困難、そして彼らの強さや前向きな姿勢を知ってもらうこと。家族に当事者がいる人はある程度、理解があると思います。でも、障がい当事者に関わる機会がほとんどない人にとっては、なかなか難しいのかなって思うんですよね。そういう方にも講演会を通じてちょっと知ってもらうだけで、考えが変わることもあるのではないかなと思っています」
障がいのある方の生活やニーズについての知識が曖昧なままだと、力になりたいと思って行った支援や配慮が実は適切でなかったり、ボタンをかけ違えていたりがあるのかもしれません。社会全体が正しい情報を共有し、対話を深めるのはやはり大事なこと。
「私の友だちも、私と出会うまでは、まわりに障がいを持っている人がいなかったため、私が車いすに乗っていることを知って、『かわいそう』と思っていたみたいです。でも、一緒に過ごすうちに、『そうじゃないんだ、と思うようになった』と言ってくれる友だちがたくさんいました。入学した当初は、『助けてあげないと!』という気持ちだった人も、みんなに助けてもらう分、自分にできることでみんなに返していく私を見て、『決して一方的ではないんだ、お互いに助け合う関係なんだと気づけた』と言ってくれるようになって」
「いい意味で、気を使いすぎないというのかな。大学でも、『なんでもやってあげるよ』ではなく、私が自分でできることは自分でやって、どうしてもできないときだけ助けてくれるという関係性を築けています。全部、手伝ってもらうと、自分でできることも奪われてしまう面があるので、そういうふうに接してくれるのは、すごくうれしいなと思います」
素顔はサッカー観戦が大好きな大学生!
母と娘の推しが一緒!?
友だちとのコミュニケーションを積み重ね、充実した大学生活を送っている玉置さん。お兄さんがサッカーをしていたため、小さな頃からスタジアムなどで観戦をしていたそうで、プライベートでは大のサッカーファンでもあります。
「いろいろなスタジアムに行って、観戦しています。小さい頃は頑張って階段のある席に行っていましたが、今は車いす席での観戦が多くなりました。前とは見る景色が違うけれど、サッカーは私にとってのいちばんの楽しみです」
好きなサッカー選手は、母娘そろって、清水エスパルスの権田修一選手なのだそう。
「母と私はめっちゃ仲よしなんです。私はSNSなどで批判的な意見がきても、さっと切り換えて、落ち込まないタイプ。母が落ち込んでいるところを一度も見たことがないので、ポジティブな性格は母譲りだと思います。母娘で一緒にお出かけすることも多く、権田選手のことも、お互いに情報交換しています!」
最後に、玉置さんが生まれ育った町田についての思いと印象を尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「町田駅周辺はいろいろな商業施設があり、欲しいものが何でも手に入る都会的なイメージがあります。その一方で、ちょっと離れると自然がいっぱいで、私の家のまわりも公園があり、緑がとっても豊か。駅周辺は都会感があって、自然もたくさんある。その両方あるのが好きです!」
PROFILE
2006年、町田市生まれ。アクセシビューティーマネジメント所属。ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー(ウルリッヒ病)の当事者で、患者家族会ウルリッヒの会副代表。人気上昇中のモデルでSNSでも活躍中。得意な教科は国語。@hiyo_nicosmile
@hiyo_nicosmile
@hiyo_nicosmile
Blog https://ameblo.jp/hiyori-tamaki/