「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

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SPECIAL

芹ヶ谷スタジオをホームに
オリジナルミュージカルを生み出す。
音楽座ミュージカル
俳優・小林啓也さん&森 彩香さん

更新日:2026.09.17

音楽座ミュージカル 俳優小林啓也 さん
森 彩香さん

まちだに拠点を置き、オリジナルミュージカルを生み出し続けている音楽座ミュージカル。作品づくりの場である芹ヶ谷スタジオでは、メンバーのみなさんが日々、自分自身や仲間と向き合っています。舞台をつくること、そして、まちだで活動を続けることとは。数々の作品で主役を務めてきた俳優、小林啓也さんと森 彩香さんに聞きました。

日本発のミュージカルをつくりたい
創始者の思いから誕生

Q 音楽座ミュージカルは、どんなカンパニーですか?

小林啓也さん(以下、敬称略) 「日本でオリジナルミュージカルをつくりたい」という創始者・相川レイ子の思いから始まったカンパニーで、今年で39年目になります。ミュージカルはもともと海外のものですが、日本で、日本人が演じる、日本人のためのオリジナルミュージカルをつくりたい。その思いのもとに仲間が集まり、音楽座ミュージカルが誕生しました。

小林さんが客演として初めて音楽座ミュージカルに参加したのは2009年。当時は苦手だったミュージカルが、次第に「なくてはならないもの」になり、翌年正式に参加

森 彩香さん(以下、敬称略) 一番の特徴は、オリジナルミュージカルをつくり続けていることで、今までに15本の作品を生み出してきました。オリジナルミュージカルとは、原作の有無にかかわらず、自分たちで舞台作品としてつくり上げるミュージカルのことです。大人が鑑賞できるオリジナルミュージカルをこれほど長期にわたって生み出しているカンパニーは、世界的に見ても珍しいと思います。

 制作は、現在代表を務める相川タローを中心に「ワームホールプロジェクト」(最終責任者の代表を中心に、スタッフやキャスト全員が当事者として意見を掛け合い、チーム一丸となって作品を作り上げていくシステム)という考え方で進めています。

小学1年生のとき、ジャッキー・チェンの映画を見て俳優を志した森さん。「私も命がけで作品や仕事に向き合いたい」と思ったのが原点。夢は今も「ジャッキーとの共演」

全員が、作品をつくる一人になる

Q 音楽座ミュージカルならではの作品づくりとは?

小林 代表の相川タローが示すテーマを骨子に、メンバーそれぞれが意見を出し合いながら、全員が作品づくりに参加します。在籍年数は関係ありません。入って1、2年目でも「君はどう思っているんだ」と聞かれるんです。言われたことだけをやるのではなく、一人ひとりが自分の思いを作品に投影する。そこが音楽座ならではだと思います。

 俳優自身が、広報や集客、協賛募集、運営まで担うことも特徴です。誰かが用意してくれた場所で、ただ作品を届けて終わるのではなく、自分たちが届けたい相手がいて、その上で作品をつくっている。だから、作品を届けるまでの過程すべてに、俳優一人ひとりが関わっているんです。

「自分が思っていること、感じていることをテーブルに出して作品をつくっていく。それが音楽座ならではの作品づくりです」と小林さん

日常から生まれ、変わり続ける作品

Q オリジナル作品は、どのように生まれるのでしょうか?

 音楽座ミュージカルの「オリジナル」には、原作のある作品と原作のない作品があります。原作のある作品では、原作の枠組みを使って、自分たちの届けたい思いを込めてミュージカル作品としてつくり上げています。

原作のある作品を手がける際には、候補となる作品をいくつも読み込み、「どれがいいだろう」と検討。これまで候補になりながら作品化されなかったものも数多くあるそう

 原作のない作品では、日常で起きたことや小さな喧嘩まで、エピソードとして持ち込み、作品の刺激や肥やしにしていきます。嘘のものをつくりたくないので、リアリティのある自分たちの日常を削って、作品に投影していくんです。そこからセリフや歌、振り付けなどをつくっていくので、すごくコスパは悪いですけれど(笑)。

小林 再演(過去に上演した作品を、再び上演すること)でも、その時代に起きていることや人々の思いを受け取り、「今、本当に欲しいものは何だろう」と考えます。2022年に『ラブ・レター』を上演したときは、劇場に入ってから主人公の最後の3行が5、6パターン変わりました。結末が劇場で変わるというのは、僕自身、ものすごく衝撃でしたね。

同じ作品を春と秋に上演した際、春と秋で結末が少し違ったことも。「再演でも、ほぼ新作みたいなものです」

 本番が始まってからも変えていきます。形になったあとも必要なものを加えていけるのは、自分たちのオリジナル作品だからこそだと思います。

僕らの『家』は、まちだにある

Q 芹ヶ谷スタジオは、お二人にとってどんな場所ですか?

 私にとって稽古場は、家みたいな場所です。家族以上に長い時間を共にして、濃いものをぶつけ合っているので、私たちにとっての「家」、ホームですね。

 作品をつくるには、自分の見たくないところにも向き合わなければいけません。でも、ここに来ると、自分が何を持って生きたいのか、何に憧れて進んできたのかという原点を思い出せる。自分が戻りたいところ、戻るべきところを思い出させてくれる場所です。

「朝起きて、開ける扉があることはありがたいこと」。創始者の相川レイ子さんが語っていたという言葉。森さんも、同じ志を持つ仲間が毎日同じ扉を開けて集まれることを「奇跡」だと感じています

小林 僕にとっては「律せられる家」という感じですね。正直、「今日は行きたくないな」と思うこともあります。自分の一番嫌なところをえぐられに、わざわざ自分から行くようなものなので(笑)。それでも、好きな仲間と一緒に演じられることは、ものすごくありがたいことだと思っています。どんなに感情がぐちゃぐちゃになっていても、最後には「じゃあ芝居やろう」となるんです。

音楽座ミュージカルの稽古場は、以前は金森にあり、30年ほど前に現在の芹ヶ谷スタジオへ。二人にとって芹ヶ谷スタジオは、仲間と作品をつくり続ける大切な場所です

まちだをホームに、つながりを育む

Q まちだとは、どのような関わりを続けてきたのでしょうか?

小林 音楽座ミュージカルの母体となった事業がもともとまちだで行われていたことから、最初からずっとまちだが拠点です。2013年には町田市と文化芸術パートナーシップ協定を結び、さまざまな活動を続けています。

小林 昨年は町田市民ホールで、普段、本格的な舞台芸術に気軽に触れることが難しい障がいのある方や、未就学児を連れた家族まで誰でも楽しめるインクルーシブ公演を行いました。市内の中学生の職場体験を毎年受け入れたり、市役所で展示を行ったりもしています。

「僕もインクルーシブ公演の舞台に立ちましたが、お客様からものすごくリアクションが返ってきて、とても刺激的で、いい空間でしたね」

Q 地域の人たちとの交流から、どんなことを感じていますか?

 2026年5月に『マドモアゼル・モーツァルト』をまちだで上演した際、人との会話や、同じ空間で長く過ごすことに不安を感じる方々をご招待しました。公演直後、衣装のままロビーでお話ししたのですが、心が動いた状態だからこそ、普段は話せないことや聞けないことも、自然と口にできるんですよね。「夢に向かってどうやって進んでいけばいいですか」など、皆さんが直接質問してくれました。

 私たちとの出会いが一歩を踏み出すきっかけになり、私たちもその姿に触発される。お互いにいいものを持ち帰れる時間だったと思います。

小林 以前、まちだで子どもたちにダンス、シニアの方に歌を楽しんでもらう活動をしていたとき、お姉さんの付き添いで来ていた小学生の男の子がいました。その子が10年ほどたって、音楽座ミュージカルの俳優になったんです。地域での活動が巡り巡って今につながっていることが、本当にうれしいですね。

全国各地を公演で巡る音楽座ミュージカル。「まちだに帰ってくると、実家に帰ってきたみたい。『あー、帰ってきた』って思います」と森さん

YouTubeで注目が広がり、全公演完売!
9月19日から配信決定

Q 今年からYouTubeで、音楽座ミュージカルの舞台裏を発信していますね。

 これまでは作品を前に出してきましたが、まず私たちがどんなカンパニーなのかを知ってもらおうと、今年からYouTubeで密着動画の配信を始めました。

 メンバーの自宅も含めて、一人ひとりがどう生き、何を思っているのか。稽古場で何が起き、作品がどうできていくのか。見せたくないところまで、赤裸々に見せています(笑)。

 すると、ミュージカルに縁がなかった方からも「これって自分の話だ」と受け取っていただけるようになり、2026年に上演した『マドモアゼル・モーツァルト』は追加公演を含めて全公演完売しました。

Q 劇場公演は終了しましたが、『マドモアゼル・モーツァルト』は9月19日から映像配信されます。お二人が演じた役は?

 『マドモアゼル・モーツァルト』は、「モーツァルトが実は女性だった」という設定のコミックを原作にした作品です。私はモーツァルトの妻、コンスタンツェを演じました。モーツァルトを男性だと思って恋をし、結婚した後に、実は女性だったことを知ります。戸惑いながらも、最後には「彼女と生きた人生は自分が選んだ人生」と引き受け、モーツァルトの死後もその作品を世に広めていく女性です。

森さんが演じたコンスタンツェは、モーツァルトの妻であると同時に「同志」のような存在。「コンスタンツェがいたからこそ、あのモーツァルトがいた」という描かれ方をしています

小林 僕は、そのコンスタンツェと不倫をするフランツという役です(笑)。もともとはモーツァルトの弟子で、モーツァルトを師として慕っているのですが、コンスタンツェと惹かれ合ってしまう。彼女への思いと、大好きな先生であるモーツァルトへの思いの間で揺れ動きます。ちなみにフランツは、最後までモーツァルトが女性だとは知りません。

小林 そして、この作品の大きな見どころの一つが、「音の精霊」です。モーツァルトは楽譜を書き直すことがほとんどなく、音が見えていたともいわれています。その「音」を精霊として舞台上に登場させているんです。それぞれにモーツァルトの4大オペラのキャラクターの名前や個性があり作品の世界をつくっています。配信では、精霊たちの動きにもぜひ注目してください。

劇中では、モーツァルトに音が降ってこなくなった瞬間、それまで舞台上にいた「音の精霊」たちが一斉に消える演出も

Q 次の新作について教えてください。

小林 8年ぶりの新作となる『カイブツはささやく』です。今、血眼になってつくっています(笑)。イギリスの児童文学を原作にした作品で、世界で初めてのミュージカル化になります。

小林 主人公は江崎夜凪(ヨナ)という中学生の少年です。ある夜、裏庭にあるイチイの木が怪物となって現れ、「これから3つの物語を話す。その後、お前は真実を話すだろう」と語りかけてくる。ヨナは怪物の物語を聞きながら、自分の中にある本当の思いに気づき、向き合っていきます。僕は今、そのヨナ役の候補キャストの一人です。

 私はヨナの親友、赤城璃々(リリ)役の候補です。ただ、まだ「候補」なので、最後までどうなるかわかりません(笑)。

小林 本当に油断できないんです。僕は昔、本番1週間前に「小林、チェンジ」となったこともありますから(笑)。今も一切安心はしていません。中学生に見えるように頑張りながら(笑)、本当に魂を込めてつくっていますので、楽しみにしていてください。

1991年の初演時から『マドモアゼル・モーツァルト』の音楽を手がけ、2026年版では35年ぶりとなる新曲も提供した小室哲哉さんが、新作『カイブツはささやく』にも楽曲を提供。現在カンパニーメンバー総出で新作をつくり上げています

作品が教えてくれた、大切なこと

Q これまで演じた中で、ご自身を変えた、特に思い入れのある作品を教えてください。

 私は『星の王子さま』を原作にした『リトルプリンス』の王子役です。入団して初めて主役を演じた作品でした。王子は約2時間、ほとんど舞台に出ずっぱり。体力的にも精神的にも自分のキャパシティを超えたときに、「人に認められたい」「必要とされたい」「愛してほしい」という、自分の中にある穴を埋めようとして生きてきたのだと気づきました。

 作品の中で、キツネが王子に「花のもとに帰っていいよ」と言う場面があります。せっかく出会ったかけがえのない相手を思って、自分が一番必要としているものを手放す。それがどういうことなのか、当時の私にはなかなかわかりませんでした。

 そんなとき、創始者の相川レイ子さんが遺した「自分が愛されるかではなく、自分がいかに愛するかという喜びを知りなさい」という言葉を思い出しました。それってすごいことだなと思って。なかなかできなくて、でも一番欲しくて。

 人は、自分が満たされた瞬間に幸せになれると信じていると思うんです。でも、そうじゃないのかもしれない。何かに思いをかけたとき、自分を超えるほどの大切な相手と出会ったときに、人は一番幸せになれるのかもしれない。そんなことを教えてくれたのが『リトルプリンス』でした。

森さんが初めて主役を務めた『リトルプリンス』。町田市内の体育館でも上演し、モコモコの王子の衣装姿に、子どもたちから「あ、羊だ」と声をかけられたことも

小林 僕は『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』ですね。最初に主役の三浦悠介を演じたのは2012年でした。でも、当時はうまくいったとは言えなくて、ある種、鼻高になって最低な自分だったなと思います。周りにもずいぶん迷惑をかけましたし、その後しばらく、自分の中でもがく時期が続きました。

小林 そして2023年、11年ぶりにもう一度、悠介を演じる機会をいただきました。森がヒロインの折口佳代役で、僕自身、どうにかこの作品をいいものにしたいと思っていた。実際に演じてみると、2012年とは違う自分で作品に向き合えていることを感じました。

小林 2012年と2023年の『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』は、自分の中では一つの人生のストーリーになっています。当時は親にちゃんと観せられなかったものを、今度は観せることができた。親に恩返しができたなと思えたことも、大きかったですね。

まちだを走ることもあるという二人。森さんはランニング好き。一方、小林さんは「世界で一番走るのが大嫌いなんです(笑)」と言いつつ、リス園まで走ったこともあるそう

「ミュージカル」と構えず、
気軽に楽しんでほしい

Q ミュージカルを見たことがない方に、どんなふうに楽しんでもらいたいですか?

 ミュージカルだと思わないで来てほしいです(笑)。

小林 僕も同じです。意外とミュージカルって日常なんです。舞台で描かれていることが、自分自身とリンクすることもあると思います。あまり特別なものだと思わずに、音楽座ミュージカルの扉を開けてほしいですね。

「いきなり扉を開けるのが難しければ、まずは遠目からYouTubeを見て、一歩ずつ入り口に近づいていただけたら(笑)」と笑顔で話す二人

木曽の町田街道と境川、
二人が好きな風景

Q 町田市でお気に入りの場所を教えてください。

小林 僕は町田街道の木曽あたりが好きです。町田病院の前を通るあたりですね。焼肉屋さんやお寿司屋さん、天ぷら屋さんなど、大きな路面店がずらっと並んでいるんですよ。駅のほうに向かっていくと、不二家の路面店もあって。家からはちょっと遠いですけど、あの通りが大好きです。

 私は境川が好きです。まちだは、川を挟んで東京都と神奈川県の「境目」があるじゃないですか。私の地元は広島ですが、これまであまり境目を意識して暮らしたことがなかったので、それがおもしろいなと思います。

 町田市民ホールへ行く途中に境川に架かる橋があって、そこから見える夕焼けがすごくきれい。ほんのり青みがかった空が、だんだんオレンジになって、真っ赤になっていく。その色の境目を見るのも好きです。

小林さんが感じるまちだの魅力は、場所によって景色やまちの表情が変わること。「駅前には何でもあるし、少し離れるとまた違う景色がある。いろいろな色を持っているところが好きです」
市内の学校を訪れる機会も多い音楽座ミュージカル。「子どもたちが気軽に声をかけてくれるんです。まちに安心して暮らしていることが伝わってきて、私も地元にいるような感覚になります」

Q 町田市のキャッチフレーズ「いいことふくらむまちだ」。その前に一言加えるとしたら?

小林 僕は「新たな出会いで、いいことふくらむまちだ」。

 私は「出会い頭で、いいことふくらむまちだ」です。

 出会ったことがすべてだと思うんです。いろいろな出会いが転がっていて、それが新しくても、昔からの出会いでも、再会でも何でもいい。そこからまた何かが始まって、ふくらんでいく。私は、そんなまちだが好きです。

PROFILE
小林啓也
東京都出身。劇団青年座研究所を卒業後、舞台や映画などで活動。2010年9月より音楽座ミュージカルに参加。2022年『ラブ・レター』で「2022 All About ミュージカル・アワード 主演男優賞」を受賞。『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』『ホーム』などで主役を務める。

森 彩香
広島県出身。大阪芸術大学舞台芸術学科卒業後、2016年4月より音楽座ミュージカルに参加。同年『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』で初舞台。『リトルプリンス』『ホーム』『ラブ・レター』など数々の作品で主役を務める。舞台に加え、声優としても活動している。
Information
『マドモアゼル・モーツァルト』9月19日から映像配信!
2026年に上演され、追加公演を含め全公演完売となった『マドモアゼル・モーツァルト』。9月19日から、舞台映像2バージョンを配信します。劇場では1バージョンしか見られなかった方も、配信なら両バージョンを楽しめます。森 彩香さん、小林啓也さんが出演するバージョンも配信されます。詳しくは音楽座ミュージカル公式サイトをご覧ください。

【配信キャスト】
モーツァルト:岡崎かのん/コンスタンツェ:北村しょう子
モーツァルト:梁 世姫/コンスタンツェ:森 彩香

HP https://ongakuza-musical.com/
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撮影/上樂博之 取材・文/小山まゆみ
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