本を読む時間も、誰かと話す時間も。
その「隣にあるコーヒー」でありたい
更新日:2026.08.20
ONSO COFFEE 園曽瑞穂さん
園曽 享さん
まちだで育ち、まちだで夢をかなえる
「コーヒーを飲みに行く」というより、自宅でくつろぎながらコーヒーを楽しむような感覚で、気負わず立ち寄れる。そんなカフェがあります。町田市金森にある「ONSO COFFEE(オンソコーヒー)」です。
「店では、本を読む人、一人でゆっくり過ごす人、子育て中の親同士でおしゃべりを楽しむ人、そして初めて訪れた人が気づけば会話の輪に加わることもあります」
そう話すのは、店主の園曽 享さん。まちだで育ち、このまちで暮らしてきた園曽さんは、自営業を営む父親の背中を見て育ち、「いつか自分も好きなことを仕事にしたい」という思いを抱くようになります。転機となったのは、会社員時代。休日にカフェで本を読みながら過ごす時間でした。
「『このコーヒー、おいしいな』『これは少し苦手かもしれない』。そんな小さな興味からコーヒーについて調べ始めると、その奥深さに夢中になりました。ワインみたいに産地や焙煎で味が変わるところがおもしろくて。数多くのコーヒー店を巡り、1日何杯もコーヒーを飲みました」
北海道で出会った妻・瑞穂さんと結婚し、奈良でコーヒーを学んだ後、2018年4月、まちだに「ONSO COFFEE」をオープンしました。
「お店を出すなら地元のまちだで、というのは昔からずっと思っていました。妻が奈良県出身で、結婚前から長女が生まれるまでの3年ほど、奈良県に住んでいたんです。その間、妻の知り合いのコーヒー店で手伝わせてもらいながら、コーヒーや焙煎について学びました」
「父が早くに他界して母が一人だったこともあり、妻とはいずれ地元に戻って母と一緒に暮らそうと話していたので、 長女が産まれた後、まちだに戻って実家を建て替え、今は母も一緒に暮らしています。」
何かをするときに「隣にあるコーヒー」でいい
園曽さんは『毎日飲みたい』と思えるコーヒーをモットーに、酸味や苦味が強すぎず、香りや甘みを引き出し、豆本来の個性が感じられる焙煎を心がけています。コーヒーが苦手な人でも飲みやすい一杯を目指しているのも、その思いから。
「コーヒーへのこだわりを前面に出すのではなくて、好きな時間を過ごしたり、誰かと語り合ったり、何かをするときのお供としてコーヒーがあればいいと思っています。お客様にとっては『何かのついで』というか、何かをするときに『隣にあるコーヒー』くらいの存在でいい。そこにいつもONSO COFFEEがあったらうれしいですね」
人が集い、つながりが生まれる場所
園曽さんが目指したのは、コーヒーを飲むためだけの店ではありません。
「この辺は団地が多くて、一人暮らしのご年配の方も多いですし、小学校が近いので子育て世代の方も多いんです。みんながほっとひと息つきに来たり、ちょっと誰かとしゃべりに来たり。家で毎日コーヒーを一杯飲むような感覚で、ふらりと来てもらえるお店を目指しています」
実際に店内では、世代を超えた交流が生まれています。
「ONSO COFFEEを始めて8年。ここで出会った人たちの輪がどんどん広がっていることを実感しています。おばあちゃんが携帯のことを若い人に聞いたり、赤ちゃんが来ると、おじいちゃん、おばあちゃんがかわいがったり。お客さん同士で会話が始まるところは、地域密着の個人店ならではだと思います。ONSO COFFEEは、立ち寄った人同士が自然につながれる、そんなコミュニティーの場でありたい。以前から、認知症の方を介護する家族のみなさんなどが集う『認知症カフェ』を月に一度行っていますが、今後はもっと地域貢献をしていきたいと思っています。もちろん、初めての方も歓迎で、無理に繋がろうとせず、自然なつながりを大切に、その人が過ごしたいように過ごせるよう様子を見て接しています」
ほどよく都会で、
ほどよく自然がある、
まちだはほどよいまち
店内には、「きんじょの本棚」も設置されています。「きんじょの本棚」は、まちだで始まった、どこで借りてもどこで返してもよい“まちの本棚”の取り組みです。
「発起人の金城美由紀さんは、もともとうちのお客さんだったんです。『いつかこんなことをしてみたい』と、『きんじょの本棚』の取り組みについて話を聞くなかで、その思いに共感して。『よかったら、お店に本を置いてみますか?』と声をかけたのが始まりです。ONSO COFFEEが1号店で、今では300カ所くらいに広がっているそうです。そんなふうに、お店での出会いから何かが広がっていくことは、僕自身にもあります。お客様に勧められて始めたモルックが趣味になり、そこからまた新しい出会いがあったりして、すごく充実しています」
お客様との何気ない会話から新しい取り組みが生まれる。そうしたつながりを育むこのまちにも、園曽さんは愛着を感じています。
「まちだは、ほどよいまち。ほどよく都会で、ほどよく自然もある。都心にも横浜にも出やすいし、本当に住みやすいまちです」
他のまちで暮らした経験があるからこそ、生まれ育ったまちの暮らしやすさをあらためて実感したという園曽さん。自然豊かな場所への移住も考えたこともあるそうですが、利便性なども含めて考えた結果、「結局、ここが一番いい」という思いにたどり着いたといいます。瑞穂さんも、このまちでの暮らしを気に入っています。
「最初は都会って怖いイメージがあったんです。でも、みんな本当にやさしくて、すごく住みやすい。子育てもしやすいですね」
車で少し走れば海や山へも出かけられ、大きな公園も多く、子どもが思いきり遊べる環境もまちだの魅力だと瑞穂さんは話します。
「遊ぶところがいっぱいあって、全然飽きないねって、奈良の家族にもうらやましがられるんです(笑)」
店内を彩るイラストは、奈良のコーヒー店で知り合ったイラストレーターによるもの。
町田市のキャッチフレーズ「いいことふくらむまちだ」。その言葉に一つ付け加えるなら、「コーヒー」だと園曽さんは言います。そんな園曽さんには、このまちを舞台にした新たな夢があります。
「カフェを営むまちだの個人店が集まって、コーヒーフェスのようなイベントができたらいいなと思っています。もっと人と人がつながるきっかけをつくれたら、まさに『コーヒーで、いいことふくらむまちだ』ですよね」