「まちだで好きを続ける」|町田市シティプロモーションサイト

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まちだでくらす

『笑いあって』平和な未来へ。
広島を見つめた夏、
町田の高校生の想い

更新日:2025.12.11

依田和歌子さん

真剣な眼差しで言葉を選んだかと思えば、次の瞬間には、屈託のない笑顔を見せてくれる。多摩地域26市の共同事業「平和ユース研修事業」で町田市の代表に選ばれた、都立町田高校1年生の依田和歌子さん。戦争の悲惨さや平和の大切さを若い視点から捉え、次代に発信できる人材を育むこの事業は、一人の高校生の心に何をもたらし、生まれ育った町田という日常の風景を、どのように映し出したのでしょうか。依田さんが辿る心の軌跡を、その言葉と共に追いました。

一つひとつの質問に、自身の言葉で真摯に答えてくれました

戦争や平和に関心を抱いたのは、依田さんにとってごく自然なことだったと言います。幼い頃から家族で見るドキュメンタリー番組を通し、同世代の子どもたちがなぜ命を奪われなければならなかったのか、心を痛めてきました。しかし、具体的な行動に移す一歩が踏み出せずにいた時、高校の教室でこの事業のチラシを目にします。

「明確な一番のきっかけというのはないんですけど、戦争や平和について学びたいと思っていました。知らないのが怖いというか。でも、自分からどんなことをすればいいのか分からず勇気が出ずにいたんです。その時に高校の黒板にチラシが貼ってあって、それで同世代の子たちと一緒に学べるというのをすごく魅力的に感じて応募しました」

「戦争で自分と同じような子たちが、どうしてこうやって理不尽に生きるのをやめさせられちゃったんだろう、とかそういうのを考えるようになって。なので、自分の言葉でいろんな人に伝えられるように、責任感を持って臨みました」

依田さんが広島で撮影した写真。原爆ドームや平和の鐘など、歴史の記憶が刻まれた場所をその足で巡りました

事前研修を経て、8月には事業の核となる広島での派遣研修に3日間参加。慰霊碑巡りや平和記念資料館見学、現地ユースとの交流や探究活動など、濃密な時間を過ごす中で最も心を揺さぶったのは、自らの足で訪れた場所の空気でした。

「爆心地から2kmほどの比治山公園にある陸軍墓地を訪れました。兵隊さんや子どもたちのお墓が並んでいるのを実際に目にすると、背中が冷たくなるような感覚でした。一人ひとりに家族や友達がいて、当たり前の人生があったはずなのに…。その時、一番にこみ上げてきた感情は、悲しいというより『怒り』でした。やっぱり、理不尽じゃないですか。だから、一番はちょっと悲しいより、怒りというか、ムカッとするようなのが多くて」

数々の出会いの中でも、被爆者から直接聞いた言葉が鮮烈に心に残っているといいます。

被爆体験者の言葉は、未来を託す重みと共に、依田さんの心に深く刻まれていました

「講話をしてくださった被爆者の方は、二度のがん治療を乗り越え、『一日でも多く経験を伝えたい』と。『自分たちの未来は、自分たちの手で作っていくんだよ』というメッセージを伝えてくれました」

被爆者の方の「未来を託す」という言葉は、依田さんの心に深く刻まれ、自分たち若い世代が社会に対して無関心ではいられない、という思いを強くしました。そして、この旅は、「平和」そのものへの考え方にも、大きな影響を与えました。

「広島のブックカフェで、『自殺者が多い今の日本を、平和だとは思えない』という言葉を聞きました。それまで私は日本を平和な国だと思っていたので、衝撃でした。確かに、身の回りの人が生きづらさを感じていることに、無意識に目を背けていたかもしれない。今の日本が、一概に平和とは言えないんだなと思うようになりました」

広島での深い学びは、未来に向けた具体的なアクションへと繋がっていきます。事後の研修を重ね、来年2月に多摩市で行われる「平和サミット」では、参加したユースたちが平和に関する政策を提言し、社会に問いかけます。

広島での研修で実際に使われた資料の数々。濃密な学びの跡が残ります

「今の学校の授業は、年表を追うようなものが多いと感じます。そうではなく、なぜ戦争が起きたのか、今の私たちにどう繋がっているのかを、もっと深く考える時間が必要かなと思います。小中学校での平和学習を、もっと奥深く、盛んにするべきだと伝えたいです」

広島で向き合った、命の重みと、理不尽に日常が奪われる悲劇。その深い経験は、町田での「当たり前の日常」が、いかに尊く、守るべきものであるかを静かに教えてくれました。そんな町田での日々について、愛おしそうに話してくれました。

町田の街並みを見つめながら、このまちの未来に想いを馳せます

「私が住んでいるような自然がいっぱいのところと、町田駅周辺みたいに、ビルが立ち並ぶような都会みたいな場所がどっちもあるのが、すごい暮らしやすいし、楽しいなって思っています」

「お気に入りの場所は、薬師池公園にある『44 APARTMENT』です。ハンバーガーとソフトクリームがめっちゃ美味しいんです! 家が野菜とお米の農家で、そのお店の近くの苗を売ってる場所に家族と行くときに見つけて。中学の頃は1ヶ月に1回ぐらい行っていました」

生まれ育った町田で進学し、普段はどのような高校生活を送っているのでしょうか。

「めっちゃJKなんですけど、ジョルナとかでプリクラ撮ったりしてキャッキャしてます(笑)。タピオカも飲みます!」

『めっちゃJKなんですけど…』と、はにかみながら高校生活を語ってくれました

そんなチャーミングな依田さんの日常を彩るのは、好きなことへの探究心です。おばの影響で始めたというダンスは、生活に欠かせません。

「ステージに立っている時の、キラキラ感がもう何回立っても本当に幸せで。見てくれた人が『こっちが笑顔になったよ』と言ってくれるのが嬉しくて、クセになっちゃうというか、やめられないですね」

探究心は、学校の勉強にも現れています。特に力を入れているのが英語で、そのきっかけからも依田さんの素直な人柄が伝わってきます。

「NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』を見て、作中に出てきたラジオ英語を聞き始めたんです。続けていたら、周りの人から『発音がきれいだね』って褒められるようになって。それが嬉しくて、もっと喋れるようになりたいと思いました」

本格的なお菓子作りも得意だそう。『あんこもうまく炊きたい』と向上心は尽きません

得意なのはお菓子作りで、スコーンやシフォンケーキはお手の物。和菓子にも興味津々で、「あんこももうちょっとうまく炊けるようになりたいな」と語る姿は、とても楽しそうでした。

広島で得た深い学びと、高校生活を彩る楽しい時間。その両方を胸に、依田さんは自身の将来も見つめ始めています。依田さんの将来の夢に、大きなきっかけを与えてくれたのが、広島で訪れたソーシャルブックカフェ「ハチドリ舎」でした。ハチドリ舎は、社会問題など「まじめなことを話しても引かれない場」として知られています。

「社会問題や平和について真面目に語り合える場所で、すごく居心地が良かったんです。その時に、私みたいに『真面目な話を安心して話せる場所』を求めている人が、もっとたくさんいるんじゃないかなと感じて。私もいつかそういう場所を作りたいです」

個人としての夢と共に、平和ユースとしての活動は来年2月の平和サミットまで続きます。広島での学びを、自身の言葉で伝えていく。その決意が、依田さんの眼差しから伝わってきました。

最後に、依田さんの「いいことふくらむまちだ」とは。少し考えた後、最高の笑顔でこう答えてくれました。

「『笑いあって』、です。みんなで笑顔でいれば、嫌なこともなくなると思うし、戦争にもつながらないから。みんなが自慢のまちだと笑い合えると良いと思います」

未来を見つめる若者がいるこのまちは、きっとこれからも、たくさんの“いいこと”がふくらんでいくに違いありません。

『笑いあって』、いいことふくらむまちだ
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